アンハッピー・ウエディング〜前編〜

寿々花さんが、リビングでホラー映画を観ている間。

俺は、誕生日祝いのご馳走を作った。

ご馳走…と言っても、実は大したものではない。

お子様ランチである。

俗に言う、大人用のお子様ランチって奴?

寿々花さんの大好物の、旗付きオムライスを作り。

そこにミニハンバーグと、エビフライとフライドポテト。

それから、お弁当用のアルミカップに入れたミートソーススパゲティを添え。

コーンと、星型にくり抜いたにんじんのサラダを作って、ドレッシングで和えた。

全部ワンプレートに盛りつけて、完成。

品数多かったから、そこそこ手間がかかった。

昨日のうちに、ある程度下ごしらえを終わらせておいて良かった。

まさか、更にここからケーキを作る手間が増えるとは。

しかし、ケーキと言っても生地から作る訳ではない。

スーパーの製菓コーナーに行くと、飾り付けるだけのスポンジケーキとかいう、超便利なものが売っててな。

更に、自分で泡立てなくても良い、絞るだけのホイップクリームなんかも売っていて。

これらをフル活用すれば、お菓子作り経験ゼロの俺でも、多分それっぽいものは出来るんじゃないかと思って。

手作りとか言って、実際はただ飾り付けるだけなんだよ。

手抜きでごめんな?

その代わり、オムライスの付け合わせのフライドポテトは、ちゃんと生のじゃがいもから作ったから。それで許してくれ。

スポンジケーキから作ろうと思っても、レシピがないし。

そもそも、お菓子作り経験ゼロの人間がだよ?

いきなり、スポンジケーキを焼くところからデコレーションケーキを作るのは、難しいを通り越して無謀というもの。

勇気と無謀は履き違えないよ、俺は。

ちゃんと身の程というものを弁えている。

失敗してケーキを消し炭にするのも、逆に半ナマでベトッとしたデコレーションケーキを作るより。

市販の便利なスポンジケーキに頼って、最低保証の美味しさだけは確保したい。

とは言っても、デコレーションだけでも結構大変だぞ。

センス無いからな。

見目は悪いかもしれないけど、味だけはそこそこ。

せめて少しでも贅沢に見せようと、いちごはケチらず、豪華に二パックも買ってきたからな。

いちごをたっぷり乗せることで、デコレーションの下手くそっぷりをカバーしていく。

結果出来上がったのは、てんこ盛りのいちごが乗っかった、いびつな白いデコレーションケーキだった。

…ケーキって言うか、なんつーか…雪崩を起こした雪山みたいだな。

そこに、ろうそくを17本突っ立てて…。

ろうそくが杉の木みたいになって、余計雪山っぽい。

…素人丸出しのデコレーションだな。

こうなると分かっていたら、せめて事前に動画サイトとか調べて、デコレーションの仕方を勉強していたんだが…。

見様見真似で、慣れないことをするもんじゃないと思い知った。

それでも。

寿々花さんが視聴中の『冷蔵庫の中』がクライマックスに差し掛かり。

いよいよ狂気と化した冷蔵庫の「中身」が主人公の前に現れる…頃には、誕生日祝いのディナーが完成した。

完成したから、とりあえずその映画は再生停止してくれ。な?