アンハッピー・ウエディング〜前編〜

珍しいよな。同じ学校なのに、男子部と女子部に分かれてるなんて。

現在お嬢さんが通っているのは、私立聖青薔薇学園女子部。

お嬢さんは俺より一つ年上だから、この春からニ年生だ。

で、俺がこの春に入学するのは、聖青薔薇学園男子部。

元々あの学校は女子校で、昔は女子生徒しか受け入れていなかった。

だが最近になって、時代の波に流されたのか、それとも単に経営的な問題なのか。

男子部を開校して、男子生徒も受け入れるようになった。

俺が通うのはそっちだ。

断じて、お嬢さんの通っている女子部ではない。

「男子だよ。男子部に入学するんだ」

「男子…」

「そう。同じ学校だけど、校舎は別なんだよ」

とは言っても、俺はまだ聖青薔薇学園の校舎を見たことがない。

だって、入学試験を受けて入学した訳じゃないから。

俺の入学は、無月院本家の偉い人が、学園の偉い人に口利きをして。

金と権力を利用して、無理矢理特別入学枠に俺をぶち込んだだけ。
 
要するに、裏口入学なのだ。

他の新入生には、とてもじゃないけど言えないな。

「そっか…。悠理君、一年生になるんだね?」

「そうだよ」

「おめでとー」

ぱちぱちぱち、と手を叩くお嬢さん。

あんたのお祖父さんのお陰なんだけどな。

まぁ、祝福してくれるなら、その気持ちは有り難く受け取っておくよ。

おっと。こんなことしてる暇はないんだった。

「そういう訳だから、必要なものを揃えてくる」

「…私も行こうか?」

何であんたが?

「いや、来なくて良いけど…」

何しに来るんだ?一緒に来て…。

「…そっか…」
 
何でしょんぼりしてんの?

俺が悪いことしたみたいじゃないか。

「じゃあ、大人しく家で…。…あ」

「あ?」

お嬢さんは、閃いた、みたいな顔をして立ち止まった。

…どうした?
 
「うん、よし。そうしよう。うん」

一人で喋ってる。

「分かった、行ってらっしゃい。私もやること思いついたんだった」

「あ、そう…」

お嬢さんも何か用事があるのか。

じゃ、今日は午後中昼寝をするということはなさそうだな。

お嬢さんの用事が何なのか、俺はわざわざ聞かなかった。 

聞く必要などないと思っていたから。

お嬢さんの「用事」が何だったのかを知ったのは、それから数時間後のことだった。