アンハッピー・ウエディング〜前編〜

ケーキの為の買い物をして、速攻で帰宅。

「あ、悠理君、お帰り」

「ただいま…ごめん、遅くなって」

しかも、散々駆け回ったのに、結局ケーキは買わずに帰ってきてるんだぜ。

マジで、何しに行ったんだっての。

「ケーキ、あった?白いケーキ」

うきうきした顔で、寿々花さんが聞いてきた。

罪悪感が半端ないんだけど。やめてくれ。

でも、正直に言うしかない…よなぁ。

「えーっと…。物凄く申し訳ないんだけど、実は何処のケーキ屋も売り切れで」

「…」

「ごめん、あの…。めっちゃごめん。予約しておくべきだった」

「…」

その沈黙が気まずいんだけど。

絶対ショック受けてる。

「…そっかー。それは仕方ないね」

しょぼん。

やめてくれ。罪悪感を煽られる。

「でも…その代わりにはならないけど、自分で作ろうと思って」

「ふぇ?」

「ケーキがないのは寂しいだろ?やっぱり…。だからせめて、下手くそな俺の手作りケーキくらいは、あっても良いかなと思って…」

いや、ド素人の手作りケーキなんて、あってもなくても大して変わらないかもしれないけど。

でも、何もないよりはマシかなぁ…と。

…ごめん。やっぱり、カットケーキでも良いからケーキ屋のケーキを買ってくれば良かったかな。

…今更だけど…。

「…ケーキあるの?ないの?」

こてん、と首を傾げる寿々花さん。

「俺の手作りで良ければ…一応…用意するけど」

「悠理君の?じゃああるんだ。やったー」

喜ぶのはまだ早いぞ。

「あんまり期待するなよ。何せ初めての試みだから…」

「悠理君の手作りなら大丈夫だよ。何でも美味しいよ」

ハードルを上げるなって。

料理だって、別に得意な訳じゃないのに。

お菓子作りなんて初めてだし、上手く出来るか分からない。

「遅くなるかもしれないけど、ちょっと待っててくれるか?」

「うん、分かった。じゃあ…怖い映画観ながら待ってるね」

そう言って、寿々花さんはリビングのテレビの前に陣取り。

一人で、ホラー映画鑑賞会を始めてしまった。

あろうことか、この間俺を戦慄させた『冷蔵庫の中』を再視聴。

やめろって。今から料理作るんだぞ、俺。家事妨害だろ。

…まぁ良いけどさ。誕生日くらい、好きなことして過ごせよ。

出来るだけ、テレビの音は聞かないようにしよう。

「さて…。それじゃ、やるかな」

寿々花さんが映画を一本見終わるまでには、全部完成させることを目標に頑張ろう。