アンハッピー・ウエディング〜前編〜

選択肢は三つある。

まず一つ目は、今日のところは妥協してカットケーキを買って帰る、という選択肢。

誕生日当日にケーキがないと、やっぱり寂しいだろ?

でもカットケーキだけじゃ可哀想だから、日を改めて、寿々花さんご所望のデコレーションケーキを買ってくる。

今度の週末にでも。

それで満足してくれるだろうか。

…でも、あんなにホールケーキが食べたいって言ってたしな。

小さいケーキじゃなくて、大きい丸いケーキに齧り付きたいって。

それなのに、「売れ切れだったから」と言ってカットケーキを買ってきたら…絶対失望するよな? 

しょんぼりした寿々花さんの顔なんて、見たくないよ。

ましてや誕生日当日に。

同じ理由で、選択肢その2も駄目そう。

選択肢その2は何だったのかって?

最初のケーキ屋に戻って、タルトかチーズケーキを買って帰る、というものだ。

でも、これも失望するだろ?

寿々花さんは、いちごのデコレーションケーキを食べたいのであって。

タルトやチーズケーキだと、「なんか思ってたのと違う…」ってなるだろ?

誕生日ケーキは重要だよ。なぁ?

ましてや、寿々花さんにとっては、初めての誕生日祝いと言っても良いのに。

肝心のケーキが、自分の気に入ったものじゃないと…いくら他に誕生日プレゼントをもらっても、嬉しさ半減というもの。

折角なら、喜んで欲しいじゃないか。

馬鹿だったなぁ。デコレーションケーキ、予約しておけば良かった。

夕方にケーキ屋なんて来たことがなかったから、売れ切れるという発想がなかった。

これは、俺の判断ミスだった。俺の考えが甘かった。

寿々花さんに大変申し訳ない。

…で、三つ目の選択肢は何なのか、って?

乙無が言ってただろ。

…いざとなったら、自分で作れって。

三つ目の選択肢は、それだよ。

昨日聞いたときは、絶対無理だと思ってたけど。

今となっては、一番マシな選択肢なように思える。

…やる気なのか?正気なのか、俺。

まさか、今から材料を揃えて、イチからデコレーションケーキを作るつもりなのか?

無謀にも程がある。

大体、そんな時間ないだろ。ケーキだけじゃなくて、ご馳走メニューも作らなきゃいけないのに。

今から帰ってケーキまで作ってたら、食べられるのは何時になることやら…。

…でも、望んでもいないケーキを買って帰るよりマシ…だよな。

「…よし」

こうなったら、俺も腹を決めるよ。

元はと言えば、俺の準備不足が招いた実態だからな。

自分のミスは、自分の手で払拭するよ。

それに、今から最初のケーキ屋に帰って、さっきのタルトやチーズケーキがまだ売れ残っている保証もない。

何もかも売り切れで、カットケーキすら買えないってことになったら。

それこそ、目も当てられないというもの。

だったら潔く覚悟を決めて、自分でケーキを用意しよう。