アンハッピー・ウエディング〜前編〜

その日、学校に行くと。

「星見の兄さん、星見の兄さん!」

俺が登校してくるなり、雛堂が近づいてきた。

「雛堂…どうした?」

「今日なんだろ?美人の姉さんの誕生日」

美人の姉さん…ではないけど。

「そうだよ」

寿々花さんの誕生日だよ。

「これ、プレゼント。星見の兄さんの姉さんに渡してやってくれ」

と言って、雛堂はずっしり重い紙袋を渡してきた。

…何これ?

俺はその場で、紙袋の中を覗いてみた。

人に渡すプレゼントを勝手に覗くなんて、と思われるかもしれないけど。

あんまりずっしりしてるから、気になって。

紙袋に入っていたのは…。

「…何だ、これ。DVD?」

「おうよ」

試しに一本手に取って、パッケージを見る。

途端、ぶはっ、と噴き出しそうになった。

血痕がついた包帯を巻いたミイラが、今にも襲いかかってきそうなポーズでこちらを睨むパッケージ。

何処からどう見ても、これは…。

「星見の兄さんの姉さん、ホラー映画気に入ったって言ってたじゃん?」

期待に満ちた表情で、雛堂が言った。

…やはり、そういうことか。

「あんた、これまさか全部…」

「うん。全部ホラー映画」

紙袋にぎっしり詰まっているDVD。これ全部、ホラー映画のDVDなのか。

何本あるんだよ?何時間分だよ。

よくこんなに掻き集めてきたもんだ。

いくらホラー映画が好きだからって、人様の誕生日プレゼントに、豪華ホラー映画DVDの詰め合わせを選ぶとは。

それ、本当に祝福してるか?遠回しに呪いをかけようとしてない?

「これ…もしかして、雛堂のコレクションなのか?」

「いや、昨日帰りに中古ビデオ屋に行って、一本百円のワゴンから選んできた」

あぁ、成程…。中古品なんだな。

良かった。

この数、全部新品で買おうと思ったら、多分とんでもない値段だったろうからな。

いくらなんでも、そこまで高価なプレゼントをされると、こちらとしても困る。

「安物だけど、でも怖さはお墨付きだぞ。あっ、前気に入ったって言ってた『オシイレノタタリ』の続編も入ってるから」

「マジかよ…」

またあれ観るの?ようやくトラウマがちょっと薄れてきたのに?

これのせいで、また我が家でホラー映画上映会が開催されるかと思うと、何だか複雑な心境だったが。

雛堂が折角、寿々花さんの為に用意してくれたものだし…。

俺に、これを突き返す権利はないな。

「…分かった、ありがとう。本人に渡しておく…」

「くれぐれも、くれぐれも宜しく伝えてくれよ。雛堂っていうイケメンからのプレゼントだって伝えてくれ」

はいはい。

ただのクラスメイトからのプレゼントだ、って伝えておくよ。

着々と、寿々花さんへのプレゼントが増えていくな。

誕生日プレゼントをもらって、嬉しくないはずがないだろうから。

雛堂と乙無からプレゼントをもらったら、きっと寿々花さんも喜ぶことだろう。