アンハッピー・ウエディング〜前編〜

さて。朝飯の後片付けをした後は。

「俺、今日ちょっと出掛けてくるよ」

「え。何で?何処に行くの?」

あ、そうなんだ行ってらっしゃい。くらいの反応だと思ってたら。

意外と突っ込んで聞かれた。

別に大した用事じゃない。

「制服、取りに行くんだよ」

「…せいふく?」

「学校の制服な。あと鞄と…。新学期に必要なものも」

こればかりは、チンタラしていられない。

新学期はもう目と鼻の先なのだ。

俺の進学は急遽決まったものだから、他の生徒はもうとっくに、制服も鞄もその他の道具も揃っている。

進学が決まって、急いで制服の採寸をして。

超特急で制服を作ってもらって、何とか新学期に間に合った。

制服以外にも、必要なものは色々とある。

今日のうちに、それらを全部揃えておきたい。

全く。引っ越しの荷物だって、まだ全部片付いていないのに。

いくら時間があっても足りないよ。

「悠理君。学校に行くの?」

きょとん、と首を傾げるお嬢さん。

おいおい、大丈夫か。

事前に伝えられていなかったのか?専業主夫だと思ってたのか。俺のこと。

主夫だけど学生だから、兼業主夫だ。

「そうだよ。何か悪かったか?」

「ううん」

あ、そう。良かった。

学校なんか行ってないで、家のことを完璧にやれと命じられるのかと思った。

「心配しなくても、自分のやるべきことはやるよ」

学校に行きながら、家事全般を引き受けるのが並大抵の苦労ではないことは、俺だって承知の上である。

フルタイムで勉強しながら、放課後にアルバイトで家政婦の仕事してるようなものだ。

ましてやこの家、超広いもんな。

掃除だけでも、相当時間がかかるだろう。

お嬢さんが食事にこだわりがなかっただけでも、感謝しないとな。

さすがに、毎食会席料理は作れないから。俺。

「何処の学校に行くの?」

「あんたと同じ学校だよ」

「えっ」

…えっ、って何だよ。

召使いと同じ学校なんて嫌だと、そう言うのかとおもっ、

「悠理君って、女の子だったの…?」

ちょ、ちが。そういう意味じゃない。

「違う。変な誤解をするな!女子部じゃなくて、男子部の方だ。男子」

これは、俺が言葉足らずだった。

俺が新学期から通うことになる学校、私立聖青薔薇学園は、共学ではない。

女子部と男子部にそれぞれ分かれていて、校舎も別々の建物なのだそうだ。