アンハッピー・ウエディング〜前編〜

もっとゴネるかと思ったのだが。

その後お嬢さんは、素直にもくもくと、俺の作った朝食を食べていた。

意外と聞き分けが良かった。

お嬢さんとしても、カップ麺が大好きだから食べていた訳ではなく。

ただ、手軽に自分で用意して食べられるから、毎日カップ麺を主食にしていたんだと思われる。

それどころか。

「これ美味しいね、悠理君。ぽりぽりしてて」

…無月院のお嬢さんが、大根の糠漬けをぽりぽりと食べている。

マリー・アントワネットがお茶漬け食べてるみたいな…。いや、偏見なんだけど…。

気に入ってもらえたようで、何より。

「悠理君は、何処でこんな美味しいものを買ってくるの?」

美味しいものって…ただの糠漬けだけどな。

「それは買ってきたんじゃなくて、俺が自分で作ったんだよ」

「えっ」

昨日もそんな反応してたな。

何でも自分で作って、貧乏臭い奴だと思ってるんだろうか。

「作ったの?これ」

「あぁ。実家から持ってきた糠床で…って、糠床知ってるか?」

「凄いね、悠理君。魔法使いみたい…あ」

あ?

「あのね、昨日私、魔法使いになる夢見たんだ」

と、お嬢さんは嬉しそうに教えてくれた。

魔法使いになる夢って…。

「それもね、時間を操る魔法使いなんだよ。格好良いでしょ?」

「へぇ…。時間を操るって、どんなことするんだ…?」

「時間を止めたり早くしたり、遅くしたりしてね。こんな丸い、小さい時計を持っててね」

指で輪っかを作って、夢の内容を熱弁。

丸くて小さい時計…懐中時計って奴か。

「私の他にも、いっぱい魔法使いが居たんだよ。雷を使う魔法使いとか、人の心が読める魔法使いとか…」

余程楽しい夢だったらしく、うきうきと楽しそうに語ってくれた。

なかなかファンタジーな夢を見たんだな。

俺、そんな夢見たことないんだけど。

「春休みは良いね。途中で起きなくて良いから、ずーっと夢の続きを見ていられるもん」

「そうか。それは良かったな」

「うん。…あ」

あ?

今度は何だ?

「…」

お嬢さんは、じーっと俺の顔を見つめていた。

何?なんかついてる?

「どうした?」

さっきまで楽しそうに喋ってたのに、何故突然黙った?

「…ううん。何でもない」

…何だよ。途中で引っ込めんなって。

まぁ話したくないなら良いけど。