アンハッピー・ウエディング〜前編〜

数分後。

「着替えたよー」

「おぉ…。おめでと…」

ちゃんと自分で着替えられたようだ。

黒いシャツに黒いスウェットという、面白みも女性らしさも欠片もないラフな格好だが。

自分で着替えたんだから別に良いよ。

つーか、今のその服を寝間着にすれば良かったのでは…?

…まぁいっか。好きにさせよう。

「それより、朝飯を早く食べてくれよ。片付かない」

何だかんだで、そろそろ午前11時になろうとしている。

これじゃあ、朝飯じゃなくて、ほぼ昼飯だな。

ブランチじゃん。

「朝ご飯…?そうだね、食べよっか。お腹空いた」

よし。

じゃあ、お茶碗にご飯をついでこよう。

糠漬けは食べるだろうか?と言うか、和食で良かったのかな…。

「なぁ、あんた朝はいつもパンか、それともご飯…」

「ふぇ?」

本人に尋ねようと思ったが。

それどころじゃなかった。

お嬢さんはあろうことか、カップ麺にポットのお湯を注ごうとしているところだった。

現行犯逮捕。

何をやろうとしてるんだ?

「…ふぇ、じゃなくて。何やってんの?」

「朝ご飯。作ろうとしてるの」

成程、そういうことね。

お嬢さんの朝食は、和食派でも洋食派でもなく…カップ麺派だったか。

それは新しいなぁ…。

「朝からカップ麺食うのか…?」

俺、実家ではあんまりカップ麺とか、食べることはなかったんだけど。

巷では、朝からカップ麺って普通なのか?

ああいうのは、昼食か夕食…あるいは、夜食に食べるものであって。

朝食にカップ麺食べる人なんて、見たことがない。

「え、他に何を食べるの?」

無月院のお嬢さんに、一般常識を求めた俺が馬鹿だったよ。

朝昼晩、毎日カップ麺とレトルト食品食べて生きてたのか。この人は。

そりゃ、身の回りの世話をする人間が必要になる訳だよ。

放っといたら、カップ麺とレトルト食品しか食べないんじゃないだろうか。

「朝からカップ麺…は食べないだろ、あんまり…」

「え、どうして?サッポロ二番塩ラーメンはあっさりしてるから、朝ご飯に向いてるよ」

今年一番どうでも良い情報をありがとう。

一人暮らししてるときは、好きなときに好きなもの食べても良かっただろうけど。

俺がこの家に来たからには、食生活は俺が一元管理させてもらうぞ。

「あんた今日から、カップ麺禁止な」

「えっ」

「今日の朝飯は、ご飯と味噌汁と糠漬け。ほら、こっちを食べろ」

「…えー…」

不満そうな声をあげるな。

食べたかったのか?塩ラーメン。

俺の目の黒いうちは、朝からカップ麺は食べさせないからな。

大人しく、俺の作った朝食を食べてもらうぞ。