アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「何で廊下なんだ?」

てっきり、見せろと言われて解答用紙の束を奪われるのかと。

すると。

「掲示板だよ。ほら、成績上位者のランキングが貼り出されるって、前に教えただろ?」

「あ、そうか…」

そういえば、そんな前時代的な伝統があるんだって言ってたな。

ランキング…載ってるかなぁ?俺。

載ってたら良いなとは思うけど、そこまでの自信はさすがに…。

「二人共、自分のことめっちゃ小馬鹿にしてきたもんなー。当然、当然ランキング入りしてんだろうな?」

「…うっ…」

何だよ。めっちゃ煽ってきやがる。

何で俺、赤点取った奴に煽られなきゃならんのだ?

「これでランキング入りしてなかったら、自分を馬鹿にした罰として、コンビニでメロンパン買ってきてもらうからな。パシリにしてやる」

「何でそうなるんだよ…」

「よし、廊下に行くぞ。そろそろランキング表、貼られてるだろ」

雛堂はさっさと歩いて、廊下に出ていった。

…やれやれ。

俺と乙無は無言で顔を見合わせ、諦めたように雛堂の後を追って廊下に出た。

雛堂の言った通り、廊下の古びた掲示板に、大きな模造紙が貼ってあった。

「デカいな、全学年のランキングが載ってるのか…」

女子部のランキングまで載ってるじゃん。

えーと、俺達は男子部の…一年生だから…。

あぁ、あったあった。女子部のランキングの下の方に、小さく地味に載ってる。

「お、これだな。男子部一年生のランキング…。一位は…」

雛堂も見つけたらしく、ランキング一位の名前を指差した。

そして、そのまま固まった。

そこに書いてあった名前。

聖青薔薇学園、一学期中間試験の成績上位者ランキング。 

男子部一学年の首位を獲得した生徒の名前は、乙無真珠。

今、俺の横にいるクラスメイトである。

…成程、そう来たか。

「凄いな、乙無…。あんた一番だってよ」

「そのようですね」

へぇ。乙無って頭良いんだな。

いつも頭の悪そうな中二病発言ばっかしてるから、とんでもないアホか、そうじゃなきゃむしろ大物なんだろうと思ってたけど。

どうやら後者だったらしい。

「邪神の眷属たる者、無様な姿は見せられませんから」

ドヤァ。

ムカつくドヤ顔だが、そのドヤ顔に見合う成績なんだから、文句も言えない。

素直に凄いと思う。有言実行、おめでとう。
 
あんたのボス、例の邪神イングレア様とやらも喜んでるだろうよ。多分。

それから、このランキング。もう一つ大事なことがある。

「それより、悠理さんも凄いじゃないですか。三位ですよ」

「そうだな…。乙無ほどパッとしないけど…三位なら、悪くないよな」

そう、俺もランキング入りしていたのである。

三位に名前が載ってた。

手応えはあったけど…まさか、ランキング入りしているとは。
 
金メダルの乙無に比べたら、銅メダルの俺は地味なように思える。

大体、一学年十数人しかいない訳で。

十何人の中で三番なんだから、実際大したことはない。

でも…やっぱり、ランキング表に名前が載ってるのを見ると、素直に嬉しいかな。