アンハッピー・ウエディング〜前編〜

その日は何とか、ベビーカステラと、夕食のクリームシチューで元気を出してもらって。
 
運命の試験結果が返ってきたのは、試験が終わった翌週。

帰りのホームルームで、採点された解答用紙の束が、俺達の手元に戻ってきた。

運命の瞬間だな。

ドキドキしながら、俺は解答用紙の束を一枚一枚確認した。

うん…。まぁまぁ、うん…。

…感じていた手応えの期待は、裏切られなかった…と言ったところか。

まぁ、そこそこだな。

めちゃくちゃ良い!って程ではないけど…決して悪くもない。

やっぱり、そこそこと呼ぶのが相応しいんじゃないだろうか。

少なくとも、裏口入学だと馬鹿にされる成績ではない。と思う。

「ふぅ、良かった…」

俺はひとまず安心…したけど。

「…雛堂、あんたは…」

どうだったんだ、と雛堂に聞こうと思ったら。

雛堂は、解答用紙の束を眺めてはいなかった。 

窓の外をぼんやりと見上げながら、微笑を浮かべて頬杖を付き。

「…空が…綺麗だな…」

…なんか言ってるぞ。

空の青さに感動している場合か?

「…乙無、あれ何?」

「さぁ…。現実逃避じゃないですか?」

「ふーん。つまらない奴だな…。ほっとくか」

「そうですね」

現実逃避したいなら、いつまででもやっておけば良いよ。

しかし。

「ちょっと兄さん達!?それはあまりにも薄情なんじゃねぇの!?」

あ、こっち向いた…。空見てんじゃなかったのかよ。

構って欲しかったのだと見られる。

「あんたはどうだったんだよ、試験」

「それは…」

「…赤点か?」

「…」

雛堂はくるりと後ろを向き、もう一度窓の外を見上げた。

「…自分の試験の点数が例え真っ赤でも、ほら、空を見てご覧よ。あの美しい青い空を。広くて美しい空を見ていたら、試験の点数なんてどうでも良くなってくるだろ…?」

「なんか下らない言い訳してるけど、つまり赤点だったんだな?」

「自分を見てないで、空を見ろよ!空を!」

「あなたは空じゃなくて、まず現実を先に見るべきなのでは?」

良いこと言うな、乙無。

常に中二病の妄想をしてる乙無にだけは言われたくないけどな。

「それに、全科目じゃねーからな!?かろうじて、五教科はセーフラインだったよ」

「じゃあ、やっぱり赤点取ってんじゃないか」

「ちょっとだけ、ちょっとだけな。サブ教科で…一つ二つ…」

あっそ。

肝心な五教科が黒点だったのは安心した。

かろうじて、補習授業は回避したな。

でも、サブ教科だからって赤点取って良い訳じゃないから。

「ふーん…。あっそ」

「何だよ、その軽蔑しきった目は…。兄さん達、随分自信満々じゃねーの?自分をそんな馬鹿にするってことは、さぞかし良い点数なんだろうな?」

逆ギレを始めた。

少なくとも俺、赤点はないから。

五教科もサブ教科も、全部黒点…どころか、平均点は越えてると思うよ。

「よーし、それじゃあ見てやろうじゃないの。廊下に行くぞ」

と言って、開き直った雛堂が立ち上がった。

…廊下?