アンハッピー・ウエディング〜前編〜

俺は内心、パニック状態だった。

こんな寿々花さんは見たことがない。

「ど、どうした?大丈夫か。どっか具合悪いのか…!?」

玄関で蹲るなんて、只事じゃないだろう。

具合が悪いのか。体調が悪くて、家に帰ってくるなり蹲ってしまったのか?

貧血か?吐き気か?血の気が引いたのか?目眩がしたのか。

俺は買い物袋を放り出して、蹲る寿々花さんに駆け寄った。

「一体どうしたんだ?具合が悪…、」

「…駄目だったかもしれない…」

「…は?」

ようやく顔を上げた寿々花さんは、くらーい陰鬱な表情だった。

顔色は悪いが…具合が悪いという訳ではなさそう。

「今日の試験…。駄目だったかも…」

「そ、そうなのか…?」

試験の話か。体調が悪いんじゃなくて。

試験の手応えが思わしくなくて、それでこんなところに蹲って落ち込んでたんだな?

「じゃあ…貧血じゃないのか?目眩がしたとかじゃなくて?」

「?うん…」

「…何だよ、全く…。そんなことか」

「そんなことって、私にとっては重要なことだよ」

そうか。それは悪かったな。

でも、俺にとっては「そんなこと」だよ。

俺は寿々花さんの試験の結果がどうあれ、ご褒美をあげるつもりだからな。

体調を崩したんじゃなきゃ、何でも良い。

「大丈夫だって、元気出せよ。そんなことで落ち込むな」

「…だって…」

「あれだけ試験勉強頑張ってたんだから、きっと大丈夫だよ。俺もたまにあるよ。試験当日は全然駄目だったと思ってても、そういう科目に限って意外と点数高かったりするんだよ」

逆に、この科目は自信有り!って思ってた科目に限って、意外と点数が伸びてなかったりすることもある。

あれって落ち込むよな。

あんなに手応えあったのに、この程度?みたいな。

なまじ期待するから、期待が裏切られたとき落ち込むことになる。

「ほら、元気出して…立てよ。制服汚れるぞ」

女子部の制服は白いから、ただでさえ汚れが目立つのに。

玄関に座ったりなんかしたら、あっという間に汚れるぞ。

「…うん…」

寿々花さんは立ち上がったけど、その顔はやっぱり、しょんぼりとしていた。

…元気がなさそうだな。

「あ、そうだ…おやつにベビーカステラ買ってきたんだ。食べるか?」

「ベビーカステラ?」

ベビーカステラと聞いて、ちょっと顔色が明るくなった。

よし。

「さっきスーパーに寄ったら、売ってたんだ。まだ温かいぞ。ほら」

「わーい、良い匂い…。…あ、でも」

でも?

「ご飯の前におやつ食べたら駄目だって、悠理君が言ってた」

「言ったな…。まぁ、でも今日は特別に、許可する」

「やったー」

だから、これで少しは元気出してくれ。

どっちみち、点数に関わらず「お願い事」は聞いてやるつもりなんだから。