アンハッピー・ウエディング〜前編〜

その後、およそ五日間に渡って、試験が行われた。

で、手応えはどうだったのって話だが…。






「…まぁ、そこそこってところかな」

五日間、ようやく全ての試験が終わった。

俺は椅子に座ったまま、ぐっと背中を伸ばして伸びをした。

この瞬間の開放感、心地良いよな。

あらゆるしがらみから解放された気分。

後は野となれ山となれ。

これでもう、しばらく試験勉強をする必要はない。

次の期末試験までは、ちょっと気を抜けるな。

…すると。

「…終わった…。終わったわー…」

「…雛堂…」

雛堂の言う「終わった」は、試験が終わったという意味ではない。

終わった(自分の人生が)ってところだろうな。

その白目を剥いた顔を見れば分かるよ。

出来もしない一夜漬けに頼るから、そういうことになるんだよ。

それを見た乙無が、辛辣な一言。

「無様ですね」

「全くだ」

これが、真面目に試験勉強しなかった奴の末路だよ。

試験結果が返ってくるのが恐ろしいな。

「畜生、星見の兄さんも乙無の兄さんも、余裕な顔しやがって。うっかり名前を書き忘れて0点取ったら、思いっきり笑ってやるんだからな」

「大也さんじゃないんだから、そんな凡ミスはしません。あなたこそさっきの試験、名前書き忘れたりしてませんよね?」

「何をぅ!名前くらいちゃんと書い…。…書いた…?」

自信なくしてんじゃねーよ。

いくら満点の解答だろうと、名前を書き忘れたら終わりだからな。

必ず試験の一番最初に名前を書き、提出する直前にもう一回確認する。

これを癖にしておけば、名前の書き忘れなんて間抜けな事故は起きない。…はず。

「どっちにしても、試験はもう終わったんだ。今日はこのままファミレスでも行って、パーッと打ち上げしようぜ」

「試験勉強は全くしてない癖に、打ち上げはきちんとやるんですね」

「よーし、それじゃあ兄さん達、早速ファミレス行こうぜ」

乙無の嫌味は聞こえなかった振り。

ファミレスで打ち上げ…ねぇ。

何度も言うが、俺には放課後に遊んでいる暇はないのだが…。

…でも、確か二年生の寿々花さんは、俺達一年生より試験科目が多いんだっけ。

ってことは、まだ寿々花さんのいる新校舎では、試験が続いてるんだよな。

帰ってくるのは、その試験が終わってからだろうし…。

それまで、多少時間に余裕はあるな。

「どうした?星見の兄さん。…まさか断る、とは言わんよな?」

「…いや、行くよ。でも、あんまり長くは付き合えないからな」

寿々花さんが試験を終えて、家に帰ってくるまでの時間なら。

雛堂の打ち上げに、付き合っても良いかな。

「よーし。そう来なくっちゃ…。…しっかし、話は変わるけどさ」

「うん?」

「…さっきから、なんか何処からか、焦げ臭い匂いしねぇ?」

と、雛堂が聞いてきた。

「焦げ臭い匂い…?」

言われてみれば…しなくもない…ような?

「どっか火事でも起きてんのかね…?」

「さぁ…。物騒だな」

「…ま、いっか。混み合わないうちに、ファミレス行こうぜ」

焦げ臭い匂いの正体は、気がかりだったが。

幸い消防車のサイレンの音は聞こえないから、多分気の所為だったのだろう。

それより、打ち上げだな。