アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…勧めておいて、何だけど。

せめて今のこれよりマシな寝間着を、と思って、自分のジャージを持ってきたものの…。

…俺のお古を着るなんて、お嬢さんにとっては屈辱なのでは?

仮にもこの人は、無月院本家の血筋のお嬢様で…。

俺はそんなお嬢様の花婿…と言うか、実質召使いみたいなもんだ。

いくらぴちぴちのジャージだろうが、召使いのお下がりを着るなんて冗談じゃない、と。

そう言うかもしれないと思ったが。

「やったー。ありがとう」

お嬢さんは喜んで、俺のお下がりジャージを受け取った。

喜ぶのか。それで良いのかあんたは。

それどころか。

「よし、早速着替えよー」

そう言って、自分のジャージを脱ぎ始める始末。

「ちょ、馬鹿。俺の目の前で着替えるな!」

「え、何で?」

「風紀の問題だよ!」

いくら伴侶と言えども、俺達はあくまでルームメイトであって。

着替えとかそういうことは、自分の部屋でやってくれ。

あんたは、自分が女であり、俺が男であることを自覚すべきだ。

それとも何か。召使いなんて物の数に入らないか?

「それに、着替えるなら今夜、寝るときにしろよ。もう朝だろ」

「あ、そうか」

起きてきたばっかりなのに、寝間着から寝間着に着替えてどうするんだ。

「自分の部屋で着替えてきてくれ。自分の部屋で」

「何着れば良いの?」

「…好きな服着ろよ…」

「うん、分かったー」

お嬢さんはてくてくと歩いて、着替える為に二階に戻っていった。

…はぁ、疲れた。

着替えくらいは、ちゃんと自分で出来るよな…?

いくら俺が召使い代わりと言えど、着替えは手伝えないぞ。さすがに。