アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「ぬっ?星見の兄さんじゃないか。何だよ?その軽蔑しきった冷たい眼差しは」

「別に…。軽蔑なんかしてねぇよ。ただ雛堂はいつも通り雛堂だなって思ってただけだ」

「褒めてる?それ、褒められてると思って良いの!?」

褒めてるんだよ。これでも一応な。

「昨日な、昨日の夜。自分だって真面目に一夜漬けしようと思って、大量に缶コーヒー買い込んで用意してたんだよ」

聞いてもないのに、突然言い訳を始めたぞ。

勉強しようとしたのは関心だが、一夜漬けは真面目な勉強とは言わない。

普段からコツコツやれ。

「で、いざ机に座ったらな?ふと…本棚が散らかってるのが目に入って」

「…」

「気になったら、放っておけないだろ?ちょっと掃除してから勉強始めようと思って…」

「…」

「本棚を片付けたら、ついでに引き出しの中も片付けたくなるじゃん?そのまま引き出しの中身も整理して…」

「…」

「…タンスの中身も整理してたら、いつの間にか日付変わってたんだわ。これ、もしかしてシンデレラの魔法じゃね?」

…典型的な現実逃避じゃん。

試験勉強を始めるつもりで、部屋の掃除を始める。あるあるだな。

そうならないように、俺は普段から自分の部屋を綺麗に掃除しておくことを推奨する。

掃除する余地がないくらい部屋を綺麗にしておけば、勉強前に気を散らすこともないだろ? 

「日付が変わっても、勉強は出来るだろ」

「そう、だからこれから頑張ろうと思ったんだな、自分は。そしてブラックコーヒーを一本飲んで、苦かったから速攻ミルクと砂糖入れたわ」

最初から加糖を買え。

「万全のコンディションで、試験勉強を始めたんだよ。するとその時…不思議なことが起きたんだ」

「…何だよ?不思議なことって」

「突然、抗い難い強烈な衝動に…。ベッドに倒れ込みたいという、強い意志に突き動かされたんだ。まるで何者かに身体を乗っ取られたかのように…」

乙無っぽく中二病めかして言ってるけどさ。

要するに、睡魔に襲われたんだろ?

「コーヒー飲んでたのに、これだぜ?こうなったらもう、勉強に集中なんて出来ないだろ。ここは戦略的撤退して、一時間くらい仮眠を取ろうとしたんだよ。そうしたら…」

「…そうしたら、一時間のつもりがガッツリ寝ちゃって、起きたら朝だったって訳だな?」

「その通り。さすが星見の兄さん!名探偵じゃね?」

名探偵じゃなくても、このくらいの推理なら凡人でも出来るだろ。

そんなことだろうと思った。

超典型的な、一夜漬けに失敗した人じゃないか。

なっ…さけねぇの…。

我が家の寿々花さんでさえ、今回ばかりは頑張ってるっていうのに。

寿々花さんの頑張りを見てるから、余計雛堂がだらしなく見えるな。

赤点でも知らないからな。