アンハッピー・ウエディング〜前編〜

真面目になってくれるのは嬉しいんだよ。確かに。

これまで散々、少しは真面目になれ、俺の勉強の邪魔をするなと言い続け。

子供っぽい遊びに付き合わされる度に、内心うんざりしてたから。 
 
そのお嬢さんが、真面目に学生らしく試験勉強に励んでるんだ。
 
だから、この変化は俺にとっても有り難い。

…有り難い…はずなのだが。

こうも突然変わってしまうと、逆に狼狽えるって言うか…。

…心配になってしまう。無理してんじゃないかって。

勉強しろとは言ったが、無理をしろとは言ってないからな。俺。

無理して身体壊すくらいなら、毎日おままごとしてた方がマシだぞ。

「…大丈夫か?無理してないか?」

「?無理って?」

「いや…ずっと部屋にこもって勉強してるから…」

突然毎日、慣れない生活を続けて。

無理が祟って、体調を崩してないか心配。

「だって、悠理君がお勉強しろって言ったんだよ」

「それはそうなんだが…」

「それに、頑張って成績を上げたら、悠理君にお願い事聞いてもらえるから」

…あぁ、成程。

その約束があるから、一生懸命頑張ってるのな。

感心な奴だよ。雛堂にも見習って欲しいくらい。

この時点で、もう寿々花さんらしからぬ度力をしてるからさ。

例え成績が上がらなかったとしても、お願い事は聞くよ。

俺はそのつもりだったけど、今は言わないでおこう。

折角、寿々花さんのモチベーションが上がってきてるんだ。

水を差すべきではないだろう。

「きっと成績上げてみせるからね。私頑張る」

「頑張るのは良いけど…無理をせずに頑張れよ。身体を壊したら元も子もないからな」

「うん、大丈夫ー」

…大丈夫なんだよな?本当に。

…後で、夜食作って持っていこう。

受験生の子供を持つ母親になった気分。

「それじゃ、私、部屋に戻るね」

「あぁ…。後で夜食持っていくよ」

「わーい。ありがとー」

嬉しそうにそう言って、寿々花さんは自分の部屋に戻っていった。

…やる気が出たのは良いことだけど、そのせいで逆に心配になるとは。

…しかし。

そこまでして叶えたい寿々花さんの「お願い事」って…一体何なんだろうな?

安請け合いしてしまったからな…。ちょっと心配になってきた。

でも、約束してしまったからには、聞いてやるしかないよな。

それに、人の心配ばかりしていられない。

試験があるのは俺だって同じなんだから、俺もさっさと家事を片付けて、夜食作って持ってって。

そして、俺も試験勉強に励むとしよう。