アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「やっべ、これもうレンタル始まってたのかー。借りてこーっと」

ほくほく、と嬉しそうに雛堂はDVDを手に取った。

電子レンジの中だぞ、それ。

本当にそんなもの借りていくのか…しかも嬉々として…。

新着おすすめコーナーに並んでるってことは、それなりに人気がある作品なんだろうな。

「電子レンジの中から…何が出てくるんだと思う?」

「さぁ…。程良く温まってそうですね」

「普通ホラー映画って言ったらさ…俺もよく見たことないけど…。病院とか学校とか、事故物件とかさ…。そういうところに出てくるんじゃねぇの?」

「僕もそう思いますけど、最近は違うんでしょう。流行り廃りってものがあるんじゃないですか。幽霊の世界でも」

「そうか…。大変なんだな、幽霊も…」

俺と乙無は、ご機嫌な雛堂に水を差さないよう、雛堂に聞こえないようにひそひそと話した。

まぁ、病院や学校に幽霊が出てくる…なんて、鉄板過ぎて飽きられてそうだしな。

雛堂みたいなホラー映画通には、家電製品の中から幽霊が出てくる…みたいな、新しいシチュエーションの方が斬新で面白いんだろう。

…だからって、何故電子レンジから…?

小さくて入れなくね?

「とにかく…俺は電子レンジの中身なんてどうでも良いからさ。もっと別の映画を…」

「別の?それなら、そうさなー。こっちはどう?」

次に雛堂が見せてくれたのは、パッケージ一面にゾンビが襲い掛かってくる映画。

またホラーかよ。 

「いや、それは遠慮しとく」

「これも嫌なの?じゃあこっちは?」

今度は、白装束に長い黒髪の女が、ぼーっとこちらを見つめている映画。

これもホラーじゃん。

「もっと他の奴を頼む」

「星見の兄さん、意外とこだわり強いのな…。じゃ、これもおすすめだぜ」

今度は、真っ暗闇の樹海で、女性らしき人物が首を吊っている映画。

絶対ホラーだよ。

怒涛のホラー映画ラッシュ。

よく分かった。さっきから雛堂が勧めてくる映画セレクションを見るに。

「雛堂…。あんた、ホラー映画好きなのか…?」

「うん。めっちゃ大好物」

…すげー目をキラキラさせながら言われた。

そうか…。好きなものがあるっていうのは良いことだな。

でも、映画初心者の人間にホラー映画ばかりを推してくるのは、さすがにどうかと思うぞ。