アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「いや、俺は別に…。映画はあんまり観ないんだけど」

「たまには良いじゃん。良い暇潰しになるぜ」

暇潰し…ねぇ。

確かに、明日から特に予定はないんだが…。

でも、試験勉強とか授業の予習復習をするつもりだったんだが。

多分寿々花さんも、「遊ぼー」攻撃してくるだろうし。

いや、待てよ。それを逆手に取るか?

おままごとさせられるより、一緒にレンタル映画観る方が楽に決まってる。
 
良い考えかもしれない。

「…分かった。ちょっと…何本か選んでみる」

「そう来なくちゃ。ほら、乙無の兄さんも」

「だから、僕は暇じゃないんですって。イングレア様より託された、崇高なる使命が…」

「はいはい。使命も良いけどさ、たまには息抜きもしねぇと疲れるぜ?」

軽くあしらわれてんな、乙無。

最近だともう、乙無の中二病発言にも慣れてきてしまった。

で…映画のDVDを選ぶんだったな。

「…とりあえず、ランキングのトップスリーを借りておくか…」

一番無難で、分かりやすくて良いだろ。

しかし。

「ちょっと待った。星見の兄さん、それは安直なんじゃねぇの?」

すかさず、雛堂ストップが入った。

「何だよ、安直って…」

「ランキングってジャンル分けされてないから、三本共ジャンルの違う映画だぞ」

そうなの?
 
確かに、よく見たら。

ランキング一位は怪獣映画、二位は医療系、三位はサスペンス映画だった。

見事にジャンルがバラバラ。

「星見の兄さん、好きな映画のジャンルとかねぇの?」

「…あんまり観ないからな…」

「やれやれ。そんなら、トーシローの星見の兄さんの為に、そこそこ映画通の自分がおすすめ映画を教えてやるよ」

マジで?

雛堂、あんた何でもよく知ってんな。

商店街のおすすめ食べ歩きスポットから、レンタルDVDのおすすめまで。

「無駄な知識ばっかり蓄えて…」

乙無がボソッと何かを呟いていたが、雛堂は華麗にスルー。

「それにさぁ、星見の兄さん家には、美人のお姉ちゃんと可愛い妹がいるんだろ?」 

いや、それは雛堂が勝手に誤解してるだけで。

「折角なら、仲良し姉弟三人で楽しめる映画が良いじゃん。それなら…」
 
「別に…。そんな気を遣わなくても…」

寿々花さんって、好きな映画のジャンルとかあるんだろうか。

映画…興味あるのかな。そもそもテレビを観てるところ、あんまり見たことないけど。

それより、最近はおままごとセットに夢中だもんな。

「初心者なら…はいっ、やっぱりこれがおすすめだぜ」

そう言って、雛堂は一本のDVDを手に取り、俺に手渡した。

雛堂おすすめの映画、どんな作品かと思ったら。

そのパッケージを見て、思わず腰が抜けるかと思った。