アンハッピー・ウエディング〜前編〜

中華まんの店を後にしてから。

「はー。肉まん超美味かったー…」

「そうだな…」

コンビニでよく見かける中華まんとは、一線を画してたな。

中に入ってるあんが、こう、肉々しいって言うか。

生姜と山椒がよく利いてて、凄く美味しかっ、

「よし、じゃあこの勢いのまま三軒目行くか」

おい、正気か雛堂。

俺はまだ、最初に食べたにんにく豚丼が重く胃袋にもたれているんだが?

「まだ食べるのかよ…」

「食べ歩きだぞ?たった二軒で音を上げてたんじゃ、食べ歩きにならねーじゃん。頑張ろうぜ」

そうだけど。

でも、それは一軒目からガッツリ丼ものを食べさせた雛堂の責任では?

普通、そういう重いのはシメだろ。

「それに乙無の兄さんなんか、既に五軒…スムージー合わせたら六軒目だぞ。負けてらんないだろ自分らも」

「負けても良いよ、別に…」

えーと、最初のラーメン屋、クレープ屋、桜餅の和菓子屋、それからワッフルサンドとスムージーと、さっきの中華まん。

本当だ。乙無だけ六軒回ってるってことになる。

食べ歩きしてんなぁ。

「つー訳で、今度はドーナツ屋だ。行こうぜ」 

ドーナツだって。

これまた…結構重そうだな。

「ドーナツですか。…良いですね」

ドーナツと聞いて、乙無はちょっと嬉しそうだった。

本当に甘党なんだな…。

甘いものならいくらでも食べられる、ってか?

「ここのチョコリングドーナツがめっちゃ美味しくてさー」

「チョコね…」

「星見の兄さん、チョコ嫌い?」

「いや、嫌いじゃないけど」

そういや、寿々花さんはよくチョコ味のケーキとかアイスとか食べてたなと思って。

夢に影響されたからだと言っていたが…。

「持ち帰りで、お姉ちゃんと妹ちゃんに買って帰ってあげなよ」

「そうだな…」

姉妹…ではないけど。

寿々花さんの分も買って帰ってあげよう。

チョコと…いちご味でいっか。

ついでに自分の分も持ち帰りにしてもらえば良かったかなって、後になって思った。

「美味っ。腹いっぱいでよく味分かんねぇけど、やっぱ美味いわ」

店先で、雛堂は買ったばかりのチョコリングドーナツに齧りつきながら言った。

そうだな。美味しいけど、今度はもう少し胃袋に余裕があるときに食べたいな。

「人間っていうのは、全く軟弱ですね」

そう言うあんたも人間だろ、と乙無に突っ込みたいところだったが。

乙無の片手にはチョコリングドーナツ、もう片方の手にはストロベリードーナツ、ついでに三つくらいテイクアウトしていた。

それだけ食べられるところを見せられたら、確かに人間とは思えない。

乙無って、底無しの胃袋なんだな。

それを知れたことが、今日一番の収穫かもしれない。