アンハッピー・ウエディング〜前編〜

で、問題はラーメン屋を出てからである。

「…」

「ん?どうしたよ、星見の兄さん。きょろきょろして」

「…にんにく臭い三人衆だと思われてないか、心配なんだよ」

自慢じゃないけど。自慢じゃないけどさ。

俺達…今、歩く異臭発生装置みたいになってるよな?

絶対なってるって。

「別に何の匂いもしないじゃん」

雛堂は、くんくんと自分の服の袖を嗅いでそう言っていたが。

「嗅覚って意外と馬鹿ですからね。自分の匂いはなかなか分からないものですよ」

「え、そーなん?」

「そうです。恐らく今の僕達は、存在そのものがスメハラでしょうね」

と、乙無。

そうか…。あんたもそう思うか。

俺もそう思ってるんだよ。

多分、すれ違う人皆、心の中で「何だこいつら。くさっ!」って思ってるはずだよ。

露骨に顔をしかめる人がいてもおかしくない。

鼻を突くにんにく臭に加え、ラーメン屋特有の脂っこい匂いが、全身に染み付いてるはずだ。

帰ったらヤバいだろうなぁ、これ…。寿々花さんもびっくり。

今日着てる服、帰ったら速攻洗濯だな。

そしてシャワーだ。そうしよう。

「それで、この後はどうするんですか。もう解散します?」

食べ歩き一軒目で解散したんじゃ、それはもう食べ歩きじゃない。

ただ、三人でラーメン屋に来ただけじゃん。

「まだ帰んなよ。次な?次…。色々考えてきたんだよ。二人におすすめしようと思って…」

「じゃあ、早く案内してください」

「勿論案内するよ。案内するけどさ」

「…けど、何ですか」

「…今腹いっぱいだから、もうちょっと休んでからで良い?」

…な?言わんこっちゃない。

初っ端から特盛りなんて頼むから。

「…腹いっぱいって、あなた…。全く情けない。人間という生き物はこれだから…」

「乙無の兄さんだって同じもの食ったんだから、腹いっぱいじゃねぇの?」

「僕は人間じゃありませんから。空腹がない代わりに、満腹感もありません」

便利な身体だな。羨ましい。

ちなみに、言うまでもないが俺も、これ以上食べられそうにない。

もう、さっき食べたにんにくが口から出そうなくらい。

お下品でごめんな。

「くっそー…。自分の胃袋の限界が恨めしいぜ…」

「特盛りなんか頼むからだろ…」

「注文する前は、食べられる気がしたんだよ。何なら、餃子と麻婆豆腐と春巻きも単品で頼もうかと思ったくらい」

それは食べ過ぎだよ。

自分の胃袋の限界くらい、自分でちゃんと管理しようぜ。

一品料理、注文しなくて良かった。

にんにく丼だけで飽和状態だよ、俺は。