アンハッピー・ウエディング〜前編〜

噎せ返る、にんにくの匂い。

この匂いを嗅いでいるだけで、お腹いっぱいになりそうな気分だが…。

「…」

ちらりと雛堂の方を見ると、どんぶりを掻き込んで、口いっぱいににんにく豚丼を頬張っていた。

…めちゃくちゃ威勢良く食ってる。

胃腸が悪くなりそうな気がするが、大丈夫なんだろうか。

いや、でも…雛堂のおすすめメニューだって言うくらいなんだから。

雛堂はこれまでも、何回もこのにんにく豚丼を食べたことがあるんだろう。

もしにんにく豚丼で胃腸をやられたことがあるなら、二度と食べないはず。

ってことは…食べても大丈夫なのか…?

「…」

ちらりと、今度は乙無の方を見る。

乙無は俺と同じように、しばし無言で異臭を放つにんにく豚丼を見つめ。

やがて諦めたのか、はぁ、と溜め息をついて割り箸をパキッと割った。

行くのか。食べるのか?

勇気あるな、あんた…。さすが邪神の眷属だよ。

「乙無…味はどうだ?」

「…食べてみたら分かりますよ」

ごもっとも。

乙無に意見を求める前に、自分の分を食べて確かめろってことだな。

…分かった、覚悟を決めるよ。

いずれにしても、食べ物を無駄にするという選択肢はないからな。

例え、自分が注文したものじゃなくても。

にんにく豚丼に罪はない。

よって、俺も割り箸を割って、にんにく豚丼に口をつけた。

恐る恐る、おっかなびっくり食べてみたが…。

「どうだ、星見の兄さん。美味いだろ?」

「…美味い」

「な?言ったろ?」

悔しいが、想像以上に美味しかった。

ほくほくのにんにくが堪らない…成程、確かに。

ちょっとピリ辛の味付けが、にんにくの風味を更に引き立てている。

これは美味しいぞ。なんか悔しいけど。

気がついたら箸が動いている。そんな美味しさだった。

雛堂おすすめの一品…案外悪くなかった。