アンハッピー・ウエディング〜前編〜

雛堂の案内で、まず最初に連れて行かれたのは。

「…何でラーメン屋?」

食べ歩き、って言ってたじゃん。

普通に席に座って、それもラーメンっつったら結構ガッツリじゃね?

この後、もっと色んな店に行くもんだと思ってたのに。

初っ端から、麺類なんて腹に溜まるものを食べて良いのか。

「ここなー、この商店街で一番美味いラーメン屋なんだわ」

自慢げな雛堂。

あ、そう…。おすすめだから連れてきたのな。

それは分かるけど、食べ歩き一軒目で来るところなのか?

「兄さん達、来たことある?ここ」

「いや、ないよ…。俺、この辺地元じゃないし」

「僕もないですね。邪神の眷属は食事をする必要がありませんから」

あー、なんか前も言ってたな。そんな設定…。

「じゃ、丁度良いじゃん。いつか二人と一緒に食べに来たいって思ってたんだよ」

「あ、そう…」

「この時間なら空いてるし、気前良く一杯食べていこうぜ。大将!特盛りにんにく豚丼3人前ね!」

おい。勝手に注文するな。

しかも、特盛りにんにく豚丼…だと?

「ラーメンじゃないのかよ…」

「あぁ。この店で一番美味いのこれだから」

本当にラーメンじゃないのか。

ラーメン屋なのに。

「つーか、特盛りにんにくって何だよ?これから商店街回るのに、にんにくの匂いさせて歩くのは御免だぞ」

「そもそも、勝手に注文決めないでくださいよ。そんないかにも脂っこそうな…」

勝手に注文を決められた俺と乙無が、雛堂に抗議しようとしたが。

「大丈夫だって。別に女の子と会う訳じゃないし。今日一日、にんにく臭い野郎三人組になろうぜ」

異臭を放つ野郎三人組なんて、想像しただけで吐き気を催すんだが?

いくらおすすめが豚丼だとしても、ラーメン屋に来たからには、ラーメン食べてみたかったよ。

今から注文キャンセルして間に合うか…?

「本当に美味いからさ。騙されたと思って食べてみてくれよ。ほっくほくのにんにくが山盛りで、めっちゃ美味いから」

「いや、そういう問題じゃなくてさ…。やっぱり注文キャンセル、」

「お待ちどおさま〜」

…来ちゃったよ。

仕事早いっすね。ありがとうございます。

「おぉ、来た来た。そんじゃいただきまーす」

雛堂は早速、割り箸を自分の分と俺達の分、合わせて三膳取って渡した。

…どうも。

「く〜っ!美味い!このほくほくのにんにくが堪らないなー」

美味しそうに食べてるのは良いんだけどさ。

この特盛りにんにく豚丼、想像以上にヤバい。

丸のままの巨大なにんにくが、これでもかとどんぶりに山になっている。

大量のにんにくで、米が見えない。

壮観なんだけど…俺、こんなに一度に大量のにんにく見るの初めてかもしれない。

俺だって料理の最中に、にんにくを使うことはあるけど。

大抵は微塵切りにしたり、包丁の背で潰したり…要するに、薬味として使う程度。

丸のままのにんにくを、そのまま調理したことはなかった。

…これ、そのまま食べても大丈夫…なんだよな?