アンハッピー・ウエディング〜前編〜

ゴールデンウィーク一日目は、溜まった家事を片付け、ついでに溜まった課題も片付け。

家の中でやるべきことをやって過ごした。

で、その翌日。ゴールデンウィーク二日目。

この日は、雛堂達と遊びに行く予定である。

いよいよ寿々花さんの留守番の日だな。

本人は、頑なに大丈夫だと主張していたが…。

「…本当に大丈夫か?」

「大丈夫だよ。悠理君、昨日から何回も同じこと聞いてるよ」

「…それだけ心配をしてるんだよ…」

出掛ける日の朝になって、準備万端整えて、そろそろ出発しようかという時間になっても。

やっぱり、残していく寿々花さんのことが気がかりだった。

「大丈夫、私留守番マスターだから。生まれてこの方、数多の留守番を乗り越えてきたプロフェッショナルだから」

数多の留守番って何だよ。

やたらと自信満々な態度だから、それがまた余計に不安を煽られるんだよな。

「良いか、勝手にキッチンに入るんじゃないぞ。昼飯は…」

「サッポロ二番醤油ラーメンにしようかな」

「…お弁当作ってあるから、それを食べろよ」

俺がいない間に、ここぞとばかりにカップ麺を食べようとするんじゃない。

留守番する寿々花さんの為に、ちゃんとお弁当を作ってあるよ。

電子レンジでお弁当を温める…くらいは出来るだろう。多分。

とにかく、俺がいない間に迂闊にキッチンに入って欲しくないんだよ。

帰ったら、また魔女の秘薬が出来てる…なんて御免だからな。

魔女の秘薬どころか、家が燃えかねん。

この人は台所に立たせちゃいけない部類の人間だ。

「勝手に危ないものに触るなよ」

「うん、分かった」

あと、伝えておくべきことは…。

「人が訪ねてきても、出なくて良いからな」

うっかりセールスとかに捕まったら、このお嬢様は良いカモにされてしまう。

「分かった」

「変な人から電話がかかってきたら、相手にするなよ」

「分かったってば」

「それから…そう、洗濯物はそのままにしておいて良いからな」

「悠理君、何だかママみたいだね」

あんたの保護者だからな。

実質ママみたいなもんだよ。

ここまでお留守番に不安の残る高校生が、他にいるだろうか?

目を離した隙に、何か突拍子もないことをしそうで。

「大丈夫だよ。ばっちりお留守番するから」

「…本当に大丈夫なんだな?」

「大丈夫、大丈夫。ほら、早く行かないと。遅刻するよ?」

あぁ、そうだな…。そろそろ行かないと。

不安は残るけど…。本人がここまで「大丈夫だ」と主張するのだから、少しくらい信用しても良いだろう。

「何かあったら、俺の携帯に連絡してくれよ」

そのときは、雛堂と乙無に断ってすぐに帰ってくるから。

「うん、分かった。行ってらっしゃい」

「…行ってきます」

ひらひらと手を振る寿々花さんに見送られ。

何とも後ろ髪を引かれる思いで、俺は玄関を出ていった。