アンハッピー・ウエディング〜前編〜

雛堂には申し訳ないけど、俺には俺の都合ってものがあるからな。

無月院本家に寿々花さんの世話を頼まれている以上、その役目を疎かには出来ない。

乙無が邪神の眷属の役目(笑)を、疎かにしていないのと同じだ。

「無理しなくて良いよ。明日にでも、雛堂に断りの連絡を…」

「…ううん、大丈夫」

え?

「私、お留守番してる。大丈夫だよ」

…その自信は何処から?

強がってる…訳じゃないよな?

「本当に大丈夫なのか?無理しなくても…」

「無理じゃないよ。私、もう16歳だもん。お留守番くらい出来るよ」

そうか。

これが普通の16歳なんだったら、俺も全く心配せずにお留守番を頼んだんだがな。

如何せんうちの16歳は、頭の中身が6歳児だから。

6歳児に留守番を頼むのは、さすがに不安だろ?そういうことだよ。

「だから、悠理君。好きなところに行って良いよ」

「…良いのか?本当に」 
 
「うん。大船に乗ったつもりでいて良いよ」
 
その大船、もしかして泥か何かで出来てない?

…ともかく、多少の不安は残るが…寿々花さんの了承はもらった。

行って良いんだよな?大丈夫なんだよな…?

子供に初めてのお留守番を頼む親の気持ちって、こんな感じなのかな…。

「それに、お留守番するのは初めてじゃないよ。これまでも、悠理君がお買い物行ってるときとか、私一人で待ってたじゃない」

まぁ、それはそうなんだけど。

「でも…あれは精々…スーパーに行ってる一、二時間程度のことだろ?」 

ガッツリ半日以上留守にしてたことはない。

だから不安なんだよ。

…しかし。

「大丈夫。私に任せて」

何故か、やけに自信満々。

任せられないから心配なんだが…。

「…本当に大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ばっちりお留守番してるから」

「…そうか…」

そこまで言うなら…任せてみるか。

俺としても、結構不安の残る冒険である。

とはいえ、これからも一緒に暮らしていく以上。

緊急の用事が出来て、寿々花さんに留守番を頼むことがあるかもしれない。

そのときの為にも、留守番の訓練をしておくべきかも。

…信じて任せてみるか。

すると。

「ねぇ、悠理君」

「うん?」

「一緒に遊びに行く人って…お友達なの?」

…それは。

「まぁ…そうだな」

雛堂と乙無だろ?

友達と言っても良いんじゃないか。何だかんだ学校では、大抵一緒に過ごしてるし…。

「そっか…。悠理君のお友達…」

何やら含みのある言い方で、寿々花さんはポツリと呟いた。

「良いなぁ、私も…」

「…」
 
「あ、ううん。何でもない…。楽しんできてね、悠理君」

「…そうだな」

雛堂達と遊びに行く日以外は。

毎日、寿々花さんの相手をしてやろうと思った。

留守番を引き受けてくれたんだから、それくらいはしないと。なぁ?