アンハッピー・ウエディング〜前編〜

一生モノのフライパンだよなぁ。これ。

是非とも一度使ってみたい…気がしなくもないが。

俺程度の料理の腕前では、分不相応というものだろう。

このフライパンだって、俺なんかに使われるのは不本意に違いない。

「何だか強そうだし、これにしたら?」

寿々花さん、あんた簡単に言うな。

「こういうのは、プロのシェフが使うものだよ。俺にはとても…」

「え?悠理君は我が家のシェフだよ?」

シェフだけども。シェフ違いだ。

俺はシェフと言うより…ただの主夫だ。

目玉焼きや野菜炒め程度しか作らないのに、こんな立派なフライパンを使うのは勿体ないよ。

焦げ付かなきゃ良いんだよ。安物でも。

「あんたの実家にいた料理人とかが使うものなの。俺には勿体ないよ」

「でも、悠理君のご飯の方がずっと美味しいよ?」

「…今頃泣いてるぞ?あんたん家の実家の料理人…」

折角、腕によりをかけて食事を作ってたんだろうに。

まさか、素人に毛が生えた程度の俺に負けるとは。

実家を出た途端、毎日カップ麺食べてるような人だからな。

…とにかく。

「こんな高級品、俺には勿体ないよ。こっちのお安い奴で良い」

どうせ、大して味は変わらないよ。

こんな高価なフライパン、買ったって畏れ多くて結局使わず。

食器棚の奥で、何年も腐らせてしまうのがオチ。

「そっか…」

寿々花さんは、何だか釈然としない様子だが。

俺は手頃なお値段の方のフライパンを選んで、それを購入することにした。

よし、これで良し。