アンハッピー・ウエディング〜前編〜

それで、何だって?間違い探し?

「ほら、見て見て」

「はいはい…」

子供が描いた絵を見せられた親の気持ちって、こんな感じなのかなぁ。

…こんなでっかい子供を持った覚えはない。

お嬢さんに差し出された自由帳を、どれどれと覗き込んだ。

ページの真ん中で区切って、左右にうさぎの絵が描いてある。

「間違いは三つあるよ」

「三つねぇ…」

…はっきり言って良い?

絵が下手なせいで、むしろ左右で合ってるところを探す方が難しい。

「えーっと…。…うさぎの耳の長さが違う?」

「耳の長さは一緒だよ」

「それじゃあ…。尻尾か?右は尻尾があるけど、左は尻尾がない…」

「二匹共、尻尾はないよ」

「これ尻尾じゃねぇの?」

「それは後ろ脚だよ」

尻尾じゃないのかよ。

これが後ろ脚?ってことは…あれ?計五本脚になってね?

どうなってんだよ。お前の頭の中の生物図鑑。

あぁ、もうどうでも良い。

これは多分うさぎじゃなくて、お嬢さんが考えた新種の生き物なんだろ。

…多分。

「えーっと、それなら…えーっと…」

「早く早くー。見つけて見つけて」

急かすなって。

これが左右の違いなのか、それとも単に絵が下手なだけなのか、区別がつかないんだよ。

「あー、もう無理。お手上げだ」

これ以上考えても分からん。

生物学的に、五本脚がおかしいってことだけは分かる。

「もうお手上げ?」

何故か得意げなお嬢さん。

何だよ、その「してやったり」みたいな顔は。

「で、正解は何処なんだ?」

「うーんとね、まずうさぎの毛の色」

毛の色って言われても、これ白黒絵なんだけど?

え?心の目で見ないと見えない系?

「右が白で、左が縞々なんだよ」

「…あ、そう…」

縞々模様のうさぎって、実在すんの?

やっぱりお嬢さんの頭の中の生物図鑑は、一般人のものとは違うらしい。

「あとの二つは?」
 
「右の子はオスで、左の子はメスなんだよ」

だから、区別つかねぇって。

リアルでさえ、うさぎのオス・メスの区別なんてつかないんだけど。

このヘッタクソな絵で、どうやって性別の判断をすれば良いんだ?

理不尽だぞ、この間違い探し。

「じゃあ、最後…三つ目は?」

「三つ目はねー、えーっと…。三つ目…。…あれ?」

…忘れてんじゃん。製作者ご本人が。

どうせアレだよ。きっと大した違いじゃないって。

右のうさぎは腹ぺこだけど、左のうさぎはお腹いっぱいとか。そういう違いしかないって。

「なぁ、俺もう勉強に戻って良い?満足した?」

「ちょっと待って。もう一つ作ったから。五時間目と六時間目の授業中に作った奴」

「…授業中?」

「あっ。授業…の、合間に作った奴があるから」

やっぱり明日、新校舎の先生にチクってやろうかな。