アンハッピー・ウエディング〜前編〜

小学校低学年の子が、近所の友達を遊びに誘うみたいなノリで。

お嬢さんが、くつろぐ俺のもとにやって来た。

何だ。俺が暇そうに見えたのか?

確かに今は暇だが、暇を楽しむのに忙しいんだよ。

「…何だよ」

「遊ぼ」

…そんなキラキラした目で言われても。

「遊ぼって…何して遊ぶんだ?おままごとか?」

「うん、良いよ」

冗談のつもりだったんだけど?

高校生にもなって、おままごとはないだろ。

あんたはそれで良いのか?

「冗談だよ…」

「えっ、冗談なの?」

当たり前だろ。

お人形遊びしよう、って言ったらマジでやりそうだな。

やらないから。

「あのな…。暇そうに見えるかもしれないけど、俺、今ようやく家事から解放されて、休憩してるところなんだよ」

「うん」

「だから、もうちょっと放っといてくれないか。せめて、コーヒー飲み終わるまで」

「うん、分かったー」

と言って。

お嬢さんはその場に体育座りして、じーっとこちらを見つめていた。

散歩に連れて行ってもらうのを待つ子犬か?

「…飲み終わるまで、ずっとそうやって待ってるつもりか?」

「?うん」

何を当たり前のことを、と言わんばかり。

…気が散って、コーヒー嗜むどころじゃねぇよ。

「分かった。分かったよ」

俺は、コーヒーを淹れたマグカップをテーブルに置いた。

「何をすれば良いんだ?遊ぶって何をするんだ」

あぁ。俺の貴重なリラックスタイムが。

休日出勤してる気分だよ。

「そうだなー。うーんと…」

しばし考えて、出てきたのは。

「…鬼ごっこ?」

「…家の中でかよ…」

今日日、小学校低学年の子供でも、無邪気に鬼ごっこはしないだろ。

何するんだ?最近の子供って。ゲームとか?スマホとか?

ましてや、高校生にもなって鬼ごっことは…。

「じゃあ、かくれんぼにする?」

そういう問題じゃねーから。

確かにこの家広いから、隠れる場所はありそうだけども。

「いや…。もっと何かあるだろ。他に…」

「…?あっち向いてホイとか?」

…何でそうなんの?

遊び方が、幼稚園児のそれ。

あんたはそれで楽しいのか?

もっと…高校生らしい遊びってものがあるだろ。

具体的にどんな遊びかと言われたら…ちょっと、困るけど。

「悠理君は、どんな遊びがしたい?」

「俺に聞くのか?…いや…俺に聞かれても…」

「じゃあ、私が遊びたい遊びで良い?」

「…鬼ごっことかくれんぼと、あっち向いてホイ以外なら何でも」

と、言ってしまったのが運の尽き。

「じゃ、おままごとにしよっかー」

「…」

鬼ごっこ、かくれんぼ、あっち向いてホイ以外なら何でも良い、と言ったからには。

今更、嫌とは言えなかった。

こうして俺は、齢15歳にして、年上の女の子とおままごと遊びをする羽目になったのだった。

…これ、何の罰ゲーム?