目の前に現れた古いトンネルを抜けると、薄暗い森があった。木々からシトシトと雨の雫が滴り落ちる。今ならこの森の奥に進んでいける気がする。そう思った。

 ゆっくりと足を進めると、一本の白百合が咲いているが見えた。

「たしか、一本の白百合の花言葉は…『死者に捧げる花』…」

なんだか寒気がしたが、足を止めることなく進んでいく。白百合の近くまで来ると、また少し遠くに一本の白百合が咲いていた。そして、その奥にはまた一本、その奥にはまた一本と美しい白百合が咲いていた。まるで、森の奥に私を招くかのように。

 私は恐れることなく進んでいく。どうせ意味のない人生だったんだ。今死んだって何の後悔もない。