ゼルはますます怒りを増した声でフェンシスに言う。


「本気で紫音をさらうなら今ここで死ぬ覚悟はできてるんだろうな」



フェンシスはまた チッ と舌打ちをすると、紫音を荒々しくベッドに投げ出し、フェンシスはこうもりになって暗闇に消えた。



あたしの中でフェンシスの言葉が繰り返される。




――いや…信じたくない……。




そう思っても、ゼルは心配して近寄ってくる。



「紫音、本当のことは後に話す。 だから今は待っていてくれ」




ずるいよ…じゃあ普通の人間じゃないの? じゃああたしは誰なの??



ただあたしはうなづくことしかできなくて、まっすぐにゼルのことを見ることはできなかった。
















間違いなく、事態は悪い方向に進んでいるのだった。