意外に甘党で、寝る前によく飲んでいた飲み物だ。離れて暮らす前はいつもリリーがいれていた。母親と父親が流行り病でなくなり、親の代わりになってくれたのが兄のアンドリューである。
泣きじゃくるリリーに黙って頭を撫でて、いつも「俺が何とかする」と慰めてくれた。そして兄は傭兵に志願し、そしてそこで才を見い出され士官学校に特待で入学し今は兵士として活躍しているのだった。一方、リリーは両親が残したこの手芸屋を継ぎ、生活の足しにしていた。本当は兄と営むことを考えていたが、兄は不器用で考えることはできなかったのであろう。
生きて帰ってきてくれて嬉しい。リリーは鍋からカップに注ぐとふんわりと紅茶の匂いが広がった。懐かしい匂いだった。食卓に兄は座ると、「あったけぇ」と小さな声で呟いた。リリーも目の前に座った。
「そういえば、ビンスのお兄ちゃんと一緒に帰ってきたの?」
ピシリーーーー。


