リリーに愛を囁く相手は誰もいないのだ。男友達さえもままならない。
リリーに学はなく、家業としての手芸屋を手伝っている程度である。ただ、文字の読み書きは出来るから顧客からの依頼でハンカチの刺繍に一言のメッセージをいれたりと自分だけの仕事も請け負っていた。
ただそれでもうちの店に来るのは女性ばかりだ。しいていうなら、家の向かいの幼馴染のビンスくらいである。ただ、家の前でわざわざ伝書鳩は飛ばさない。しかも奴は文字は書けない。
ミミズみたいな字で、これはなんの絵なのかと聞いたら怒って帰ったことがある。
溜息をつきながら、その手紙をお手紙のボックスにいれた。初めの辺りは間違っているよ、と鳩に一生懸命諭したが首を傾けて受け取るまで断固として離れなかったのだ。そして、私も同じように鳩の首に手紙をくくりつけて『お宅の鳩さん宛先間違えていますよ』と書いても変わらず三日に一回届けに来るのだった。
だから最近では渋々手紙を受け取り、お野菜は果物を小さなお皿に乗せ食べさせて帰している。今日はさくらんぼである。ビンスの家からもらったものだった。