宛先不明の伝書鳩



「思ってない。あんなに思われている人がいるんだ、羨ましい、いいなって思ったの」

絶句。シグの端正な顔が急激に赤みを帯びていく。耳まで赤い。
リリーより動揺している様子を見るとリリーは逆に落ち着いてきた。


照れて、石のように硬直している姿をまざまざと見つめ、この栗色の髪の毛は瞳と同じでビンスとは違うのか、とか思ったりもできた。

片方の手を顔半分覆いながら、彼はようやくまばたきを二回ほどぱちぱちと行い「あのさ」と切り出した。

「俺のこと、ちょっとはいいと思ってくれてる?」

本当に直球で聞かれて同じように余裕がなくなったリリーは頷くだけにとどめる。
目を一瞬逸らそうとしたけれど、シグの瞳が熱を帯びていくのをまざまざと見せつけられ艶やかな声で「触れても?」と聞く。逸らせなくて、リリーもまた期待しているようで、小さくうんと掠れる様に囁いた。彼の傷だらけで大きな手がリリーの頬を包む。