宛先不明の伝書鳩



階段を降りるような音が聞こえた。それは怒涛の勢いだった。
そのまま扉が叩きつけるように開かれ出てきたのはーーーシグだ。


栗色の髪の毛がぴょんぴょんと跳ねており、目が少し充血している。胸元は少しはだけていて目のやり場に困った。今起きたといわんばかりの姿に思わず圧倒されていると、唇が少しだけ震えた。言わなくちゃいけない、から。

「言いたいことがあって」

シグの顔が直ぐに強張った。険しい顔をした後、ふ、と力なく笑った。

「聞いた、ごめん、俺の勘違いだったって」

「……」

「お母さんには悪いけど、落ち込んだ」

リリーは常に違うって言ってくれていたのにな、となんとも寂しそうな表情をした。
彼はお母さんに事のあらましを聞いたらしい。その話を聞いてなんとも申し訳ない気持ちになった。

「ごめんねシグ。でもね、あの手紙のやり取りちょっと楽しみにしてたんだ」

「え…?気持ち悪いとか思ってない…?」

縋るような目つきでか細く問いかけてくるシグに、目を逸らさずリリーは言い切る。
恥かしくって顔が真っ赤になるのを感じるが。