「そういえば、最近部活の調子はどうよ?」
「そこそこ、かな……」
 なんか聞いたことがある声。ふと顔を上げると、交差点を陸斗さんとその友達が自転車に乗ってこっちに曲がった! このままでは確実に先輩とすれ違うことになる。だからといって、ここで引き返したら確実に美空ちゃんに疑われるし……すると優夢は無意識に先輩に気づかれないようにと目をそらした。
 まだ……まだ……慎重にタイミングを見計らって、先輩が通り過ぎたタイミングで視線を戻す。幸いにも美空ちゃんは私の少し怪しい行動を気にすることはなく、別の話を始めちゃった。ホッと胸をなでおろし、ボーッとする。
「優夢?」
 名前を呼ばれたのに気づいた私は、慌てて返事をする。
「え!? 何!?」
「いや、話しかけてもボーッとしてるからさ、どうしたん?」
「何でもない、何でもない。」
「なら良いんだけど……具合とか悪いなら言ってよ? で、最近パーカッションの調子はどう?」
「うーん、私個人の演奏ではいい音が出せてるんだけど、他のパートと合わせると微妙だな……って感じ。」
「そっか〜。私も一人で演奏する時はいい音なんだけどね〜他のパートと合わせるのってすごく難しいんだよね!」
 やっぱりみんな、課題は同じなのかもな……そんなことを考えたりすると気づいたら友唯ちゃんの家の前まで来ていた。
「いらっしゃ〜い!」
 家に入ると友唯ちゃんのお母さんが笑顔で出迎えてくれた。
「友唯なら部屋にいると思うわ。ゆっくりしていってね!」
「ありがとうございます!」