数日後。1年生の体験入部の期間になった。私は、一番入りたい部活、吹奏楽部に行ってみる。部室となっている音楽室に行くと、そこには美空と友唯もいた。
「あれ!優夢じゃん!やっほー!」
「優夢は吹奏楽部に入るの?」
そんなことを聞いてきたので第一候補は吹奏楽部と美空たちに伝える。
 吹奏楽部のメンバーを見渡すと……
(あっ!)
 そこには小学生の時に憧れていた先輩、橋田弘樹(はしだひろき)がいる。今となってはなんでそんなに憧れていたのか疑問に思うほどだが。
 その時、ふと弘樹先輩と目が合ったような気がした。ちょっと気まずくなって、すぐに目をそらしたがもう遅い。タッタッタ……と足音が近づいてくる。とてつもなく嫌な予感がする。
「お前、優夢だろ?」
「そうですけど?」
不機嫌そうな声で答えるけど、お構いなしに弘樹は話を続ける。そんな会話を聞いて、美空と友唯は黙って私たちを見守っている。
「お前は小学生の頃俺を信用して助けてくれた。また俺を……いや、俺たちの吹奏楽部を(たす)けて!」
 もちろんあの頃は信用していたが、もうそれは昔の話。今と昔は全然違う。ただ優夢は気になったことがある。
「吹奏楽部を……ですか?」
 小学校の頃は、直接『俺を助けて!』と言われたが、今回は『吹奏楽部(、、、、)を助けて』と言った。
「そう。吹奏楽部だ。」
「じゃあ……何を助ければ良いんですか?」
「今年、お前を含めて4人以上1年生をこの吹奏楽部に入れてほしい。」
「え、4人だけで良いんですか?」
「うん。4人入れば十分だ。 じゃ、俺は練習してくるから。」
「でも、なんで……」
 弘樹は、私の言葉を最後まで聞かずに楽器の練習に行ってしまった。本当はなんで4人なんですか?って聞きたかった。確かに人数は他の部活と比べて少ないものの、廃部になってしまうような人数ではないはず。