私は愚かで考えなしの『お嬢様』だったけど、ためらわず勢いのままに行くことが功を奏した場面もあった。
 夫の力になりたいと、そう決めた時。
 隠さず、気取らず、心の全容をカミルにそのまま打ち明けると、彼は少しだけ思案した後で、我が家の状況や今後の展望をかいつまんで説明してくれた。
 今まで敢えて私に言わなかったことを、偽ることなく。
 今のところ財政は安定しているし、ヴァルテンブルク家からも資金援助を受けているけど、まだまだ安心はできないと。少しでも人手が加わってくれるとありがたいと。
 真剣な目つきで、彼は私にそう言った。
 馬鹿な私がどれほどの助けになるのか、はっきり言って心もとないばかりだったろう。
 それでも、私の決意に本気で向き合い、対等な目線で返してくれたことが嬉しくて。
 私は「わかりました」と、間を置かずにうなずく。
 すると彼は、優しく微笑んで「ありがとう」と、うなずき返してくれた。
 その時ようやく、遅まきながらも、私はお飾りの妻から一歩外へ出られたのだと思えた。