少し急ぎ足で前へ進んでいく理久斗くん。
「理久斗くん」
愛菜が呼ぶと足を止めた。
「速いよ、もう少しゆっくり歩いて」
「あっ、ごめん、早く家にって思ってたから、ごめんごめん、愛菜のスピードに合わさないとな」
「うん、もう少しゆっくりでお願い、息切れる(笑)」
気づいてないかもだけど速くなったのはさっきの彼女に会ってから急にだった……
理久斗は家の玄関を開けると「由依(ゆい)ー」と叫んだ。
階段を降りてくる音が途中で止まり、ひょいと顔を出した。
「何?」
「バスタオル2枚持ってきて」
「はーい」
階段を降りると玄関まで持ってきてくれた。
「ありがとう」
「あの、こんにちは、ありがとうございます」
「へっ?びっくりしたぁ、お兄ちゃんしか階段から見えなかったから」
「驚かせてごめんなさい」
「いえ、どうぞ」
理久斗くんがリュックを降ろしてくれて玄関に置いてくれた。
バスタオルを1枚玄関に敷いて靴を脱ぎ靴下も脱ぐ2人。
「由依のTシャツでも持ってこさせようか?」
「大丈夫、部活のTシャツがあるから」
理久斗くんがスリッパを出してくれて2人で浴室に行く。
「後ろ向くから着替えて」
「絶対みないでよ(笑)」
「わかった(笑)」
愛菜はTシャツに学校の体育の半ジャージに着替えた。



