隣を見たら笹木くんがぐっと身を寄せてきた。


え?え?なになに
ち、近いよ?!


心臓が跳ねる。


講義まだ終わってないのになんで、

一条くんが近くにいるのになんで、

なんで、


ドキドキしてるの私。



手がこちらに伸びてきて思わずギュッと目を瞑るとシャッとペンの走る音が、 


おそるおそるノートを見ると


私の書いた"笹木くん"の文字の上からバツが書かれていた。


「え、?」


「呼び方違うでしょ?」


「っ!」


そ、そんな耳元で、!!


周りにバレないように小さい声だからかいつもより低く響く男の人の声。


明るい彼が大人の男の人に感じた。


思わず振り向きそうになったけど、息遣いが分かる距離に体が固まった。


ジワジワと顔に熱が集まる。


心臓がドキドキと高鳴る、もしかして彼にも聞こえてしまってるのではないか。


なにか反応しないと、


私は震えそうな手を誤魔化すように自分のノートに書いた。



ーーーーーーーーーーーーー
   
ーーーーーーーーーーーーー
   パンダくん
ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー



なんだかむず痒くなって濁すようにパンダのイラストを描いた。


あまり絵は上手くないから、少してろんとしたパンダが完成した。


私のノートを見たパンダくんは嬉しそうににっこり笑った。


柔らかそうなほっぺたがふにゃりと緩むその笑い方は私が描いたイラストに少し似ていた。