「そのようですわねぇ。うちの弟もあまり野菜を食べないものですから言って聞かせているんですのよ。でも閣下を見ていますと、好きなものを食べさせてもいいのかも……などと思ってしまいました」

 面倒見の良いお姉さんなんだな。頬に手を当てふぅ。と息を吐いた。

「弟がいるんだね、他にも?」

「弟の他に妹がいます。双子でとても可愛らしいのですのよ」

 モルヴァン嬢はそのままで十分可愛いぞ! なんだ、その笑みは! 双子が羨ましいくらいだ。

「あ。わたくしったら……閣下は休憩中でしたのに申し訳ございませんでした。またお時間をとらせてしまいました……ご挨拶だけ。と思っていましたのに」

 ……もっと話を、いや、ダメだ。

「いや、迷惑などではない。今から図書館へ行くのか?」

「はい」

「それでは図書館まで送ろう」

「え、いえ、それは」

「そろそろ戻らないと煩いやつが探しにくるかもしれないんだ」

 モルヴァン嬢に控えているメイドと護衛は以前と同じだ。一歩引いてこちらを伺っていた。

「宜しいのですか? ご迷惑でなければ……閣下のお声はとても聞き心地が良いのでお話をしていて楽しいです」




 ……令嬢にそんなことを言われたのは初めてだった! 動悸が止まらない。