……え? 頭を上げるとそこには日傘を差したリュシエンヌ・モルヴァン嬢がいた!
 
「君は……どうしてここに?」


「ご機嫌よう。本日は図書館に本を返しに参りましたの。天気が良かったので散策をしておりましたら閣下の姿を拝見致しましたので、ご挨拶をと思い声をかけさせていただきました」

 にこっと笑いお辞儀をするモルヴァン嬢。青空と相まって爽やかな笑顔だ。

「丁寧な挨拶痛み入ります。まさかこんなところで会うとは思わず借りたハンカチが手元にない……」

 令嬢が立っているのに自分だけ座っているわけにはいかず立ち上がった。

「ハンカチは結構ですのに……」

 汗で汚れたハンカチは返却不要と言うことか……それなら新しいものを買って渡そう。


「閣下はとても背が高いのですね。見上げないとお顔がよく見えませんわ」

 確かに私は人より大きい。見上げる形になるので首が痛くなるだろう。離れた方が良いのか? そうすればそこまで見上げることもあるまい。少し離れるとモルヴァン嬢が言った。

「わたくしお邪魔でしたわね……お食事中でしたのにご迷惑を考えずに声をかけてしまい申し訳ありませんでした」

 食べ終わったはずだがサラダが残っていた。私は生の野菜があまり好きではない……

「いや、食べ終えて読書をしていたところだから気にしないで欲しい」

「お野菜も食べないといけませんよ? 大きくなら……なりましたわねぇ」

 野菜もしっかり食べて健康的に成長してもらわなくては困る。と小さい頃に言われていたけれど、全く問題はなかった。

「ははっ。十分に成長してしまったよ」

 しまった。という感じで眉を顰める顔もまた可愛らしい。