号令と共に令嬢たちが一斉に駆け出して、人気のある騎士達の周りを囲んでいましたわ!


「す、凄いですわね……」

「お嬢様は行かなくてもよろしいのですか?」

「そうね。でも差し入れが無いわ……」

 応援隊? の令嬢達は皆さん差し入れを渡していますのよ? 私ったら気が利かないわね。でも早く声を掛けないとタイミングを逃してしまいますわ。


「普通にお声かけしている令嬢もいますよ。お話だけでも宜しいのでは無いですか?」

「そうね。せっかくここまで来たのに声をかけなくては意味がないわね」

 意を決して声をかけようとしていたら、練習場から離れて行こうとするグレイソン・エル・アルヌール閣下。

 早足で追いかけましたわ。足が長いですのね。あの時もいつの間にか姿が見えなくなっていましたもの。


「あ、あのっ……」

 声をかけるも聞こえていないようでもう一度声をかける。

「あの、すみませんっ」

「……ん?」

 ようやく振り向いてくださいましたわっ!



「あの、失礼ですがグレイソン・エル・アルヌール閣下でお間違いないでしょうか?」

「……あぁ、」

「わたくしリュシエンヌ・モルヴァンと申します」

「……あぁ、」

「あの、そのお急ぎのところ失礼致します。先日閣下にお借りした傘を返しにまいりました」

 もしかして機嫌が悪いのではないでしょうか……急いでいたところに声を掛けてしまったのかもしれませんわ!