週が明け学園へ復帰した。学園の噂は殿下の話で持ちきりでしたわ。

「リュシエンヌ! おはよう。今日からやっと復帰したのね! ところで殿下のお話聞いた?」

 親友のセシリーに声をかけられました。

「えぇ。突然だったから驚いたわ」

 本当のことは誰にも言わない。もう家でもこの件について両親に聞くことも話すこともしない。そういう約束。

「殿下はリュシエンヌの事を気になっていると思っていたのに、残念だわ……学園じゃないと殿下のお顔を見ることが出来ないのに、卒業を待たずにリル王国へ行ってしまわれるなんて……」

「そうね」

「でもリル王国の王配だなんてすごい縁よね? ロイヤル同士の結婚だもの。王女は美女だと我が国まで噂に上るくらいだし、結婚式は華やかに行われる予定だってお父様から聞いたわ」

「王女と手を取り合って素晴らしい国を作っていただきたいわよね。殿下の未来に幸あるようにお祈りしなきゃね」

 この話はここでお終いですわ。それよりも私達は学生ですから学生の本文は勉強です。

「それよりセシリー、私が休んでいた時のノートありがとう。本当に感謝しているわ。大変だったでしょう? 何かお礼しなきゃ」

 自分の分と私の分、合わせて二人分のノートを取ってくれるなんてさぞかし大変だったでしょうし、時間を取らせて申し訳ない気持ちです。セシリーのノートは丁寧で分かりやすくて時間をかけて作ってくれたのだと思いました。

「それがね、リュシエンヌの分もノートを作っていたら復習にもなってすっごく勉強も捗ったのよ。だから今回のテストは期待しても良いかもしれないわ。でもお礼をしたいというのなら、新しくオープンしたカフェでケーキをご馳走してくれても良いわよ」

「カフェが出来たの? それは是非行きたいわ! ご馳走させて貰うわね」

「いいの? 遠慮しないからね? いっぱい注文するからね」

 セシリーと話をしていたら普段と変わらない学園生活が戻ってきた。としみじみ感じました。

 それから例の上級生も学園に戻ってきたようで、私の顔を見て一言。


「変な噂を流して悪かったわね。あと怪我をさせて申し訳なかったわ」

 言うだけ言って去ってしまいました。上級生は侯爵家のご令嬢で殿下の婚約者候補に挙がっていたようです。殿下がリル王国へ行くことが決まり、令嬢も新たに婚約者が決まりそうなんだとか?

 婚約者候補に挙がっていた令嬢達は王妃様がお見合いの場を設けて早々に婚約の取り決めを行ったようでした。侯爵令嬢が伯爵令嬢に謝罪をするなんて思いませんでしたし、勇気がいる行為だったと思いました。

 噂の出所なんて気にしませんし、放っておけばそのうち忘れられてしまうのです。良いも悪いも噂好きの貴族ですから。