「姉様、スッキリした顔に見えるのは気のせい?」

 あら。嫌ですわ。ハリスに気づかれてしまいました。

「気のせいですわ。さぁ冷めてしまいますわよ。いただきましょう?」

 晩餐の間は質問攻めにあいましたが、ハリスもパティもアルバート様の事は元々好きじゃなかったと聞きました。婚約してやったという上から目線が嫌で私の事を案じてくれていたようです。

「私達の自慢のお姉様がなんであの男と婚約させられなくてはいけないのかとお父様に問いただしたいくらいでしたが……それが家の務めと言われればお父様のことが嫌いになりそうで」

 そうよね。もしそんな答えが返ってきたらパティが結婚に夢を見られなくなってしまいますもの。それは可哀想ですわ。

「コリンズ伯爵家に共同という形ではあるが融資をしていた。その縁でリュシエンヌとアルバート殿の婚約の話があって良い話だと思ったんだ。コリンズ伯爵夫妻は優秀なリュシエンヌに期待してくれていたし、令嬢達もリュシエンヌが姉になってくれるのは嬉しいと言っていて、アルバート殿も乗り気だったんだよ……」

 確かにそうでしたわ。はじめてお会いしたときはとても優しかったのですもの。変わったのは私がコリンズ伯爵家のお屋敷にお邪魔をしに行くようになってから? でしたわ。私がお屋敷に行くのを控えたらアルバート様がうちに来ることもありましたわ。

「あなた、終わった話を掘り返すのはやめましょう。リュシーは優秀で可愛いですし、また婚約の話がたくさんきますわ」

 また? たくさん? そんなお話があったのですね……

「そうだな、すまない。今度はリュシーの意見もちゃんと聞くから、安心してほしい。ハリスやパティの相手を決める時もみんなで話し合おう」

 お父様がパティに言うと安心したような顔をしていました。それにアルバート様との婚約を受け入れたのは私自身ですもの。次……があるか分かりませんけれど、私はともかく、ハリスとパティには優しい方と出会いがあれば良いのですが。そんなことを考えていたら食後のティータイムに入っていました。

 
 夜の食事の後は家族でお茶をする。これが我が家のルールです。朝は揃わないことが多いので、夜に皆で集まります。お父様のお帰りが遅いときはちゃんと連絡があるので、その時はお父様抜きになってしまいますわね。社交の時期になるとお父様とお母様が出掛けてしまうのでその時は三人で食事をする事もありますが、シェフが私達向けに好きなものを作ってくれたりするので、それはそれで楽しみの一つですの。

 婚約破棄の話はうちだけの話ではありませんので、向こうの出方を待つ。という事で、解散しようと思っていた時でした。

 

「旦那様。コリンズ伯爵から至急の手紙が届いております」
 

 あら、まぁ。
 

「お嬢様にもお手紙が届いております」


 あら、まぁ。


 第二王子殿下から……?