雨が降る中、図書館へと向かった。屋根があるので濡れずに済んだ。

 なんとなく本を読む気にはなれなくて、扉に手をかけずに雨音を聞いていた。

 ざぁざぁ……と音を立てる。私は雨の日が嫌いではない。雨が止んだら空気が綺麗になり木々は喜び美しいと思う。

 でもなぜか寂しくなる、そんな気分……



「あれ、リュシエンヌ?」
「エリック殿下……」

 とても驚いた様子でした。偶然ですわよね。

「図書館に入らないの?」
「……雨音を、聞いていました」

「寒くない? 風邪を引くよ」
「そう言えば……エリック殿下にお借りした上着をお返ししなくてはいけませんね。それとキレイなお花、ありがとうございました」

「上着はいいよ。もう着ることもないだろう。替えもあるし捨ててくれ」
「そういうわけにはいけませんわ。お借りしたものはきちんとお返しをしないと」

「頑固だね、リュシエンヌ」
「普通ですわよ?」

「……そんなものなのかな? それにしても雨止まないね」
「そうですわね。昨晩から続いていますわね。でも私は雨が嫌いじゃないです」



「雨が?」
「はい。そう言えば数年前に弟と王都へ行って、急に雨に降られてしまった事を思い出しましたわ」

「……弟か」
「弟はとてもしっかりしていて、わたくしが注意されるほどです」

「リュシエンヌもしっかりしているよ」
「まぁ、ありがとう存じます。その時弟に街歩きとはこういう事体も発生するので備えておかなくてはいけません。と、言ったら弟は姉様は街歩きが初めてではないのに備えてないの? と言ってきました」

「それはしっかり者の弟君のいう通りだね」
「えぇ。こんな会話をしていたら先客がいらして笑われましたのよ」