「ねぇエリックに聞きたいことがあるの」

 他国の客人が帰った日のことだった。王宮はバタバタとしていて久しぶりに母上の顔を見た。

「なんですか藪から棒に」

「婚約破棄の立会いって何?」

 ……バレたのか。

「友人だったコリンズ伯爵子息が婚約破棄をしたがっていたので場所を提供したまでです」
 
「わざわざ令嬢を王宮まで呼びつけて、恥をかかしたの?」

「恥をかいたのは私の方です。彼女は何も悪くなく素晴らしい令嬢なのですから!」

「子息が悪いの?」

「……いえ。私にも原因はあります」

「それで責任をとって婚約するの?」

「いえ、そういうわけではなく、私は彼女が良いんです」

「婚約破棄を相談された時貴方はどうしたの? どうして関係のないあなたが立会いなんてしたの? 家同士が決めた婚約よね? どうして関係のない貴方が家の問題に首を突っ込んだの? コリンズ伯爵は婚約破棄によって多大な慰謝料が発生しているのよ。穏便に話し合いで婚約破棄出来ればそこまでの話にならなかったかもしれないわね」

 チラリと母上が私を見て来た。痛いところを突いてくる。質問攻めにしているけれど答えさせてくれない。


「私がバカだったのです。一方の意見を真に受けて責め立てる子息を止められなかったのですから」

「まぁ、バカであることに間違いはないわね。その後にモルヴァン嬢に婚約を打診するところもバカみたい。私がその立場なら絶対に断るわね」

 ……誰でも良いから連れてこい。と言ったくせに。