「リュシエンヌおはよう」

「おはようございます。ご機嫌麗しゅう」

 朝から爽やかに挨拶をする殿下。最近その殿下の件で私は頭を悩ませているというのに……お父様もお母様もお疲れのようだし、そういう雰囲気は伝染する。使用人達は皆気を遣いながら仕事をするし、弟と妹は明るく努めているように見える。いじらしい……

「今日も美しいね」

「ありがとう存じます、お上手ですこと」

 紳士として淑女を褒めるのは当然。という顔をされましても……ここは学園で社交界ではありませんのに。

「来週から王宮にお客様が来るから、王宮図書館は休館になるんだ。知っていたかな?」

「はい。司書様に教えて頂きました」

 メガネをかけた司書様はいつも優しく声を掛けてくださる。

「もう知り合いが出来たの? さすがリュシエンヌ。因みにだれかな?」

「? メガネをかけた身長の高い、黒髪の男性です」

「あぁ。成程、館長代理だね。館長が足を滑らせて階段から落ちてしまい休養中なんだよ。彼が代理をしているんだ」

「まぁ、お気の毒ですわね。図書館は階段が多いですし雨の日なんかは特に滑ってしまいそうですね」

「対策も含め、彼は代理をしているんだ。世代交代も考えているんだってさ」

 などと、校舎に入る前にお話をしているのが悪かったのですわね。

 お昼休憩に先生に呼ばれて授業の準備をお手伝いしました。王国の歴史はとても興味深く私の好きな授業で、成績もトップでしたので先生は授業には関係のない話なども聞かせてくださり楽しくお手伝いをしていました。明日の授業のお手伝いでしたので、そろそろ戻らないと……と思い、教室に向かっていたところ、上級生と肩がぶつかりましたの。