これだけはしてはいけないと思っていた。しかし離縁まで妻に考えさせたのなら早々に動くしかないのだ。

 私は王宮図書館に来ていた。居られるかは分からない博打のような行動だ。平日の夕方前。朝から働き夕方になると息抜きをしたくなる時間帯。再来週他国から大事な客人が二週間滞在する。というので明日から警備が強化される、その前を狙って……

 私は昼過ぎに来て王宮図書館の二階で久しぶりに本に囲まれて過ごす、あっという間に時間は経過するものだ。やはり面白いな……

 と呟く。



「……これはこれは。モルヴァン伯爵じゃないか! 珍しい事もあるもんじゃ!」

 ……本当にお忍びで図書館に来るんだな、陛下は。

「お久しぶりです。相変わらずですね」

「ん? どういう意味じゃ?」


「相変わらず本が好きで、息抜きにいらしたのでしょう? ここに来れば陛下に会えるのでは? と思いました」

 ……ここで陛下に会っていたのは学生時代の頃の話。あれから忙しくなりのんびり図書館に来る事は無くなった。

「ここはあまり人が近寄らんからのぅ。リラックス出来て良い。そう言えば伯爵の娘もよく来ているぞ、親に似て古代語に興味があるようだ。話をしたがとても楽しい時間を過ごせた」

「娘を褒められて悪い気はしませんね」

 懐かしいな。と言っても話題は子供達の話になるのだけれど……歳を重ねたもんだ。


「こういう会話も楽しいのが、わざわざプライベートで私に会いに来たのだから本題があるのだろう? エリックと伯爵の娘の婚約の話か?」