「同窓会はどうだった? 久しぶりに会う方もいたのだろう?」

 帰ってきてから気分が優れないのか顔色が悪い妻に声を掛ける。何かあったのだろう。

「あなた……どうか何も言わずに私と離縁してくださいませ」


 ……りえん?

「な、何故だ? 私が何かしたと言うのかい? それなら謝るよ。君を傷つけることはしていないと思うのだが、私が気が付かないところで君をそこまで追い詰めてしまった理由はなんだ!」

 浮気は絶対にない。神に誓って! 今日の茶会で変な噂でも耳にしたのか?

「伯爵家を守る為ですわ……」

 涙を流し離縁してください。という妻の姿に耐えられなくなる。なんでも王妃様のティーパーティーで殿下を信用できない。と言ったらしいのだ。自分の意見を言うように言われ、婚約の辞退を願ったとか?




「……なんだ。そんな事か……」

「そんな事ではありませんわ! わたくしは、」
「似た者夫婦という言葉があるじゃないか。私なんて殿下に同じ事を直接言ったよ? 不敬だと思い、爵位を返上して他国にある別荘に移り住もうとも考えた。でもその時には君が付いてきてくれる。と思っていた、違う?」

「もしそうなら、喜んで貴方に付いて行きますわ。当然でしょう? 夫婦ですもの」

 当然だという妻に安堵した。爵位がなくなっても付いてきてくれるという。そんな妻を愛しているのだから、離縁なんて絶対にしない。

「爵位がなくなっても?」

「関係ありませんわ。貴方は家族を守ってくれると信じていますもの」

「私もそうだよ。君は家族を守る為に離縁だなんて不吉な事を言ったのだろう? 私は絶対に離縁などしないよ。だから一緒に考えてこの件についても乗り切ろうじゃないか。私たちの大事な娘を守ろう」

「……あなた」

 妻を抱きしめると妻は震えていた。それだけ本気で離縁を考えていたのだろう。私は妻も娘も家族も守ってみせる。


 

「離縁は絶対にしないから、それだけは覚えておいて」


 二度と言わせないからな!