「娘の婚約破棄をされた相手は殿下の友人でした。殿下はその際立会いをされていました」

「……なんですって?」

「ご存知ありませんでしたか? この王宮内で行われていましたのに」

「……続けてちょうだい」

 王妃様はご存じありませんでしたの! 言ってもよろしい内容ですのよね?! 王妃様の口元が少しピクリと動いたような……

「事実確認もしないまま、娘を悪く言い婚約破棄をした子息の肩を持ち殿下は立会いをしたのです。結局子息の家からは謝罪を受けましたし慰謝料も頂戴して家同士の問題は解決しております。殿下からもその後謝罪を受けましたので、それで終わりでいいではありませんか! なぜ婚約破棄の立会いをした責任として娘と婚約をなさろうとするのです? あの時娘が王宮に呼ばれどれだけ不安だったかと考えると、胸が押しつぶされそうです。ですので殿下を信用できないのは仕方がない事だと……申し訳ございません。わたくし大変失礼をっ……」


 言ってしまいましたわ! 王妃様の前で殿下を信頼できないどころか、己の感情までぶつけてしまうなんて、臣下としてあり得ない言動ですわ!


「……息子の話とずいぶん違うので驚きを隠せませんが、夫人の言う通りなら息子をこのまま放っておけませんわね。か弱い令嬢を呼び出し立会いをしただなんて、王子としての立場がありませんし許される事ではありません。この件についてこちら側でもきちんと調べることにします。夫人と話がしたいから同窓会なんてまどろっこしい会を開催したけれど、これで口実ができましたからまた報告がてらお茶をしましょう」

「はい。どうか……よろしくお願い致します」

 報告がてらお茶……その時に罰されてしまうのかしら……