「うちの下の息子がなんでもモルヴァン嬢に婚約の打診をしているんですって?」

「そのような話がある。と主人から聞いております」

「こんな事を聞くのは卑怯かもしれないけれど親として心配になって……令嬢はどう思っているのかしら?」

 婚約したくない。といっています。と答えられたらどれだけ楽かしら……

「うちの娘は分不相応だと思っているようです」

「そうなのね。うちの息子を慕っているとかではなく?」

 確認ですのよね?

「娘はその……婚約破棄をされ傷心の身ですので、他の方を慕っている余裕はまだないようで……主人はのんびりしていて結婚どころか婚約すらしなくてもいい。などと言う始末で娘も主人の言葉に甘え出す始末です」

 夫のせいにしておきましょう。一方的な婚約破棄をするような男なんて女の敵ですもの! しかもうちの娘は悪くありませんし被害者なのに娘に欠陥があるみたいな見方をされるのには耐えられませんもの。娘の良さを分かってくれる相手との婚約を望みます。

「子を持つ親として悩ましい問題よね。うちの息子もお見合いをどれだけさせても首を縦に振らなくて、それなら誰でもいいから連れてきなさいな。と売り言葉に買い言葉で……エリックは、王位を継げないからエリックを支えてくれるお嬢さんと一緒になって欲しいだけなのよ。王配の話もあるにはあるんだけど、嫌みたいで……つい甘やかしてしまうのよ」

 王族の結婚は国を揺るがす話ですものね。

「モルヴァン令嬢はとても優秀だと聞いているわ。伯爵と夫人の娘さんですからそれは理解出来るわ。伯爵は頭が柔軟で新しい事を取り入れるがとても上手ですもの。頭が古い貴族達との違いよね。夫人も学生時代から身分問わずに誰にも公平で尊敬していたのよ」

「勿体無いお言葉です」