「……その件について言い訳をするつもりはありません。私が悪かったのです。責任を取らせてくだい」

「責任……ですか?」

「えぇ。婚約破棄された令嬢は次の婚約が難しいのではないですか? 世間的には爵位の低いものから求婚の話や後妻の話もあると聞きます。私がリュシエンヌ嬢と婚約することで周りは静かになるでしょう」

 婚約破棄されたとなれば、欠陥がある。と言われる場合もある。しかし、今回の場合はコリンズ伯爵家から正式な謝罪を受けて、あちらに非がある。ということで話は纏っている。歳の離れた後妻の話なんてもってのほかだし、そんな話はリュシエンヌの耳に入れたくない(結果妻が話をしたらしいが、それはそれ)

「婚約破棄された令嬢と王子が結婚だなんて、周りが許しませんよ。娘の立場を考えると厳しいですね」

「そこは私が守ると約束します。父もリュシエンヌ嬢を気に入っているので味方になってくださる」

 ……陛下の名前を出すなんて卑怯だな。陛下に気に入られている点では、さすがリュシエンヌ! 我が娘ながら凄いぞ。と思った。しかしここで引くわけにはいかない。私は娘の気持ちを優先しなくてはいけない!

「不敬を承知でお話しさせていただきます。私はコリンズ子息の件もあり、殿下を信用出来かねるのです。王子という身分で一貴族の婚約破棄に手を貸し、その令嬢と婚約をしてその事をなかったかのように……娘をバカにしているとしか思えないのですよ。私は娘に次こそ幸せな結婚をして欲しいと思っています。ですから……殿下では娘に不釣り合いです!」
 

 ……あぁ。言ってしまった。不敬が過ぎる。家族が路頭に迷うことになったらどうしようか……爵位を返上して預けてある財産があるからそれで他国の別荘へ移住、貴族ではなくなるがそこそこの暮らしは出来るだろう。などと魂が抜けそうになりながら考えていた。